1. 考えられない悩み
考えているのに進まないのはなぜ? 「今決める・確かめる・保留する・やめる」の4つの置き場所
RBTDESIGN
会議でも話したし、資料も集めた。夜、ひとりで考える時間もとっている。
それでも…、半年前と同じ話をしている。
考えているのに進まないとき、足りないのは考える量とは限りません。
その検討が、「今決める」「確かめる」「保留する」「やめる」のどこにも置かれていないのかもしれません。
何度考えても結論が出ない。もしかしたらそれは、答えが見つからないからではなく、何をもって検討を終えるのかが決まっていないからかもしれないのです。
何年も「使い道を考えている」
P社長は、物流と加工を手がける会社を経営しています。
数年前に取得した工場には、ずっと使われていない広いフロアがありました。
若い人が集まる娯楽施設にする。地域の交流拠点にする。行政と連携して活用する。
いくつもの案が出ていました。
どれも悪くない。どれにも可能性がある。
ただ、どれにも決まらないまま、数年が過ぎていました。
新しい案が出るたびに、少し調べる。少し盛り上がる。けれど、本業が忙しくなると話は止まる。そして、しばらくすると別の案が出てくる。
決して、何も考えていなかったわけではありません。
それでも進まなかったのです。
需要はあるのか。収益は成り立つのか。行政と連携できるのか。
アイデアはある。でも、どれを選べばよいのか分からない。
ここに、考えているのに進まない理由が隠れているように思います。
「まず動いてみる」では進めないこともある
考えているのに進まないとき、よく勧められるのは「まず動いてみる」ことです。
小さく試す。期限を決める。完璧を求めない。どれも役に立つ考え方です。
ただ、P社長の場合はどうでしょう。何を小さく試せばよいのでしょうか。娯楽施設なのか、交流拠点なのか。それとも、まったく別の使い道なのか。
そこが決まっていないから、動けないのです。
実は、「とりあえず動く」にも、何を試すかという判断が必要です。
行動力が足りないのではなく、行動するための判断ができていない。
このふたつは、似ているようで違います。
進まない検討には、置き場所がない
私がこうした場面で見るのは、アイデアの良し悪しだけではありません。その検討が、今どのような状態にあるのかです。
経営の検討には、大きく4つの置き場所があります。
① 今決める
判断に必要な材料は十分にある。あとは何を選ぶかを決める段階です。
② 確かめる
まだ分からないことがある。市場の需要やお客様の反応など、事実を確かめてから判断する段階です。
③ 保留する
今は決めない。ただし、いつ、何が起きたら再び検討するのかを決めておきます。
④ やめる
少なくとも今の会社では取り組まないと決める。検討を終えることも、一つの判断です。
大切なのは、必ず何かを実行することではありません。保留も、やめるも、立派な判断です。
むしろ問題になるのは、どこにも置かれていない検討です。
「決めたいけれど、まだ材料が足りない気がする」
「確かめたいけれど、何を調べればいいのか分からない」
「保留したいけれど、そのまま忘れてしまいそう」
こうして4つのあいだを行き来していると、何度考えても同じ場所に戻ってしまいます。
「そのうち考える」は、保留ではない
例えば、ある小売店で、ホームページを新しくするかどうかが1年近く話題になっていたとします。
会議のたびに見積りの話になり、他社のサイトの話になり、最後は「今期は忙しいから」で終わる。
一見すると、保留しているように見えます。
でも、これは保留とは少し違います。
いつ、何をきっかけに検討を再開するのかが決まっていないからです。
では、次のように決めたらどうでしょう。
「新商品が出そろう春に、もう一度考える。それまでは検討しない」
これなら、結論が出ていなくても、いったん検討を終えることができます。
同じことを何度も考える必要がなくなり、今やるべきことに集中できます。
検討を終えるとは、必ずしも答えを出すことではありません。次にいつ、どう扱うかを決めることでもあるのです。
「判断できない」の中身を見てみる
ここで、P社長の話に戻ります。
P社長の会社が判断できなかったのは、需要、収益性、行政との連携についてでした。
これは「決められない」というより、「まだ確かめていないことがある」状態に近いのかもしれません。
だとすれば、4つの置き場所のうち「確かめる」を選べそうです。
ただし、ここにはもう一つ、大切な問題があります。
何を確かめれば、そのあと決められるのでしょうか。
例えば、3つの事業案を比べるとします。
地域に必要とされることを優先するのか。
収益性を優先するのか。
本業とのつながりを優先するのか。
この優先順位が決まっていないまま需要を調べると、どの案にも「需要はありそうだ」という結果が出るかもしれません。
調査をしたのに、まだ決められない。そうならないためには、調べる前に「何が分かれば、選べるのか」を考えておく必要があります。
つまり、足りないものには2種類あるのです。
ひとつは、判断するための材料。
もうひとつは、判断するための基準。
材料が足りなければ、確かめにいく。
基準が決まっていなければ、何を大切にして選ぶのかを考える。
この違いが分かるだけでも、次にやることが変わってきます。
検討を置き直す、4つの問い
もし、何度も同じことを考えているなら、一度、次の4つを問いかけてみてください。
最終的に、何を決めたいのか?
そもそも何を選ぶ検討なのか、言葉にできるでしょうか。
決められない理由は、材料が足りないからか、判断基準がないからか?
何が分からないのかを分けて考えます。
確かめるなら、何を調べ、どんな結果なら決められるのか?
調査や実験をする前に、結果をどう判断するか考えておきます。
今は決めないなら、いつ、何をきっかけに再開するのか?
保留する場合にも、次に考える条件を決めておきます。
最初の問いに答えられないなら、まだ「決めること」自体がはっきりしていないのかもしれません。
ふたつ目で判断基準が足りないと分かったなら、すぐに調査を始める必要はありません。まず、何を優先するのかを考えることが先です。
もちろん、単純に忙しくて考える時間がとれていない場合もあるでしょう。そのときは、時間を確保することが必要です。
大切なのは、止まっている理由を見分けることです。
P社長の検討は、どこまで進んだのか
P社長の会社は、外部の力を借りることを選びました。
数年にわたる検討の中で、これは一つの前進だったのではないでしょうか。社内だけで考え続けるのでも、思いついた案に飛びつくのでもない。
外の視点も取り入れながら、何を確かめ、どう選ぶのかを考えていく。
そして、P社長には、もう一つ印象的な言葉がありました。
「地域に必要とされ、この会社がやる意味のある事業を考えたい」
単に空いている場所を埋めたいのではない。地域にとって必要で、自分たちが取り組む意味のある事業にしたい。
この言葉には、P社長の会社が大切にしたい判断基準の手がかりがあります。
収益性だけでも、地域への貢献だけでもない。その会社だからこそ取り組む意味を、どう考えるのか。
そこが明らかになれば、いくつもあった案の見え方も変わってくるはずです。
どの案が選ばれるのかは、まだ分かりません。
ただ、次に何を考える必要があるのかは、少しずつ見えてきています。

あなたの検討は、どこに置かれていますか?
考え続けること自体が、悪いわけではありません。
大切なことほど、簡単には決められないものです。
ただ、考える時間を増やすことと、判断に近づくことは同じではありません。
何度も同じ話に戻っているなら、アイデアを増やす前に、その検討の置き場所を考えてみてください。
今決めるのか。確かめるのか。保留するのか。やめるのか。
どれを選んでも構いません。
置き場所が決まれば、次に何をするのか、あるいは今は何もしなくてよいのかが見えてきます。
考え続けることよりも、考えたことをどう扱うか。
そこに、事業を前へ進めるための大切な判断があるのです。
止まっている検討が、事業全体のどこにあたるのかを見る(準備中)