2. アイデアが形にならない悩み
会社の強みがわからないときは? いちばん喜んでくれたお客様を思い出してみる
RBTDESIGN
「御社の強みは何ですか」
実績もある。お客様にも喜ばれている。それでも、そう聞かれると言葉に詰まることがあります。
「丁寧な仕事」「高い技術力」「柔軟な対応」。どれも間違ってはいないけれど、ほかの会社との違いが伝わりません。
そんなときは、得意なことを並べるだけでなく、それを誰が、どんな理由で喜んでくれたのかを振り返ってみます。
同じ能力でも、お客様が求めていることによって、価値は変わります。その組み合わせが見えると、自社の強みを具体的に説明しやすくなります。
それではこの問題を、設計事務所を営むS社長の相談から考えてみます。
施工写真を載せても、問い合わせにつながらない
S社長の事務所では、住宅や店舗の設計を手がけています。
仕事の多くは紹介でした。SNSにも施工写真を載せていましたが、そこからの問い合わせは年に1〜2件ほどです。
最初の相談は、SNSからの問い合わせを増やしたい、というものでした。
更新は続けています。見せられる実績もあります。それでも、写真に何を添えれば、この事務所に頼む理由が伝わるのかがわかりません。
事務所の考え方を紹介する文章は、すでにありました。
ただ、その言葉が、日々の発信で何を伝えるかを選ぶ手がかりにはなっていなかったのです。
「どんな人に来てほしいか」を聞いてみる
私は、問い合わせを増やす方法を考える前に、S社長に尋ねました。
「問い合わせが増えるなら、どんな方でもいいですか」
S社長は、こう答えました。
「どんな人でもいいから来てくれ、というわけでは、もちろんなくて」
そこで、これまで依頼してくれたお客様が、何を期待していたのかを聞いていきました。
「変なのを期待されてるんですよ」
S社長の言う「変なの」とは、ただ奇抜なものをつくることではありません。
思いもしなかった間取りや、意外な素材の使い方。自分では考えつかなかった提案が出てくることを、お客様が楽しみにしているのです。
さらに、S社長はこう続けました。
「プロセス自体も楽しんでくれる人じゃないといけない」
完成した空間だけでなく、打ち合わせを重ね、思いがけない案に出会いながら、一緒につくっていく時間。その過程を楽しんでくれるお客様がいました。
ここに、強みを言葉にする手がかりがありました。
「提案力がある」を、お客様の言葉に置き換える
会社の側から見れば、S社長の得意なことは「提案力」や「デザイン力」と言えます。
でも、それだけでは、お客様は何を期待してよいのかわかりません。
お客様の側から見れば、もう少し具体的になります。
自分では思いつかなかった暮らし方に出会える。相談しながら、家づくりそのものを楽しめる。
そうした体験を求める人にとって、S社長の提案は、事務所を選ぶ理由になり得ます。
一方で、希望どおりの間取りを早く決めたい人には、意外な提案や、何度も話し合う過程が負担になるかもしれません。
どちらのお客様がよい、という話ではありません。求めているものが違うのです。
得意なことを、そのまま強みとして伝えても、誰に響くかはわかりません。
「誰が喜ぶのか」「その人に何をもたらすのか」まで考えることで、選んでもらう理由として説明できるようになります。
強みを探すときは、実際に喜んでくれた人から考える
強みを知るために、実績を書き出したり、競合と比べたりすることは役に立ちます。
そのうえで、抽象的な言葉にまとまってしまうなら、具体的なお客様に戻ってみます。
「対応が柔軟」と言われたのは、どんな相談に応えたときだったのか。
「提案がよかった」と喜ばれたのは、何に困っていた人だったのか。
その提案によって、何ができるようになったのか。
ここまで振り返ると、同じ「柔軟な対応」「提案力」でも、中身が見えてきます。
S社長の場合も、「デザイン力」という言葉だけでは見えなかった特徴が、お客様の期待を聞くことで具体的になりました。
強みを表す言葉は、社内だけで考えるよりも、お客様が喜んだ場面から探すほうが見つかることがあります。
誰に選ばれたいかは、会社のこれからにも関わる
対話の中では、仕事が増えたあとの話も出ました。
S社長は、いずれ人を迎え、今より強いチームにしたいと考えていました。若いスタッフに、この事務所で働くことを誇りに思ってもらいたいという希望もあります。
どんな仕事を増やしたいのか。その仕事を、どんな仲間と進めたいのか。
ここにも、強みを言葉にする意味があります。
たとえば、意外な提案をお客様と一緒に楽しむ事務所を目指すなら、その姿勢は、お客様だけでなく、一緒に働きたい人にも伝えることができます。
もちろん、それだけで採用につながるとは限りません。それでも、この事務所でどんな設計をしていくのかは、伝わりやすくなります。
強みを言葉にすることは、発信の材料を増やすと同時に、これから増やしたい仕事を考えることでもあるのです。
自社の強みを確かめる、4つの問い
自社について考えるなら、次の4つを順に確かめてみてください。
1. 得意なことは何ですか
まずは、よく頼まれることや、無理なくできていることをひとつ挙げます。最初から、他社にはない特徴である必要はありません。
2. それを特に喜んでくれたのは、誰ですか
実際のお客様を思い浮かべます。その人は、どんな希望や困りごとを持っていたでしょうか。
3. そのお客様にとって、何がよかったのでしょうか
「喜んでくれた」で終わらず、何ができたのか、どんな負担が減ったのか、どんな楽しみが生まれたのかを考えます。
4. 同じことを、喜ばない人はどんな人ですか
丁寧な話し合いを喜ぶ人もいれば、早く決めたい人もいます。合わない相手を考えると、誰に向けた強みなのかが、はっきりします。
思い出したことは、まだこちらの解釈かもしれません。可能なら、お客様にも「何がよかったですか」と聞いて確かめます。
その答えをもとに、これからも同じ価値を届けたい相手を考えていきます。
S社長の相談で見えてきたこと
最初の対話で、SNSの投稿内容や、強みを表すひと言が完成したわけではありません。
ただ、問い合わせを増やすために、何を伝えたいのかが少しずつ見えてきました。
予想を超える提案があること。その提案を、お客様と一緒に楽しみながら形にしていくこと。
対話の終わりに、S社長はこう話していました。
「ちょっとずつ、言語化できました」
今後は、その特徴がお客様にとって本当に選ぶ理由になっているかを確かめ、発信にも反映していきます。
たとえば、完成写真に加えて、どんな希望から、どんな提案が生まれたのかを紹介する方法が考えられます。写真だけでは伝わりにくかった、家づくりの過程も見せられるかもしれません。

いちばん喜んでくれたのは、誰でしたか
会社の強みがわからないときは、これまでのお客様の顔を思い浮かべてみてください。
あなたの会社の仕事を、いちばん喜んでくれたのは誰でしょうか。その人は、何を喜んでくれたのでしょうか。
「私たちは何が得意か」に、「だから、この人の役に立てる」が加わると、強みは伝わりやすくなります。
→ その強みが、事業のどこにつながっているのかを確かめる(準備中)
→ RBTDESIGNが、社長とどのように考えるのかを見る(公式サイト)