3. 構造が見えない悩み
事業を一枚で整理するには? 決まっていないことも、そのまま書いてみる
RBTDESIGN
事業のことを一枚にまとめようとすると、埋まらない欄が出てきます。
誰に届けるのか。何を強みにするのか。どんな会社を目指すのか。
考えてはいるけれど、まだ言い切れない。だから、資料も完成しない。
そんなときは、決まっていることと、まだ考えていることを、書き分けてみます。
一枚にまとめるために、すべてを決める必要はありません。決まっていないことも見えるようにすると、次に何を考えればよいかがわかります。
注文住宅の会社を経営するX社長との打ち合わせでも、それが役に立ちました。
特徴は言える。でも、何を大切にする会社かがまとまらない
X社長の会社には、家づくりへのこだわりがいくつもありました。
自然素材を使うこと。住宅の性能を高めること。建てる前に、何か月もかけてご家族の話を聞くこと。
手がける棟数と地域を絞り、完成したあとの手入れまで続けることも、大切にしていました。
同じころ、会社では冊子やロゴの制作、住んでいる方への取材が進んでいました。
制作を進めるには、何を中心に伝えるかを選ぶ必要があります。
ただ、特徴をすべて並べても、それぞれがどう関係しているのかは見えません。どれも大切だからこそ、何を先に伝えるかが決めにくくなっていました。
きれいに埋めると、仮の言葉まで決定に見える
事業を整理するとき、項目の決まったシートは便利です。
お客様、提供する価値、強み、売り方。枠に沿って書くと、考えが抜けているところに気づけます。
一方で、空欄があると埋めたくなります。まだ確かではない言葉でも、ひとまず書いておこうと思うことがあります。
ここで気をつけたいのは、書いた本人には仮の案でも、読む人には決定事項に見えることです。
そのまま冊子やホームページに使われれば、いつの間にか会社の正式な方針になってしまうかもしれません。
だから、何を書くかと一緒に、どこまで決まっているかも伝える必要があります。
一枚の中で、4つの状態を書き分ける
RBTDESIGNでは、事業を一枚に整理するとき、内容に次の状態を書き添えます。
決定:会社として、すでに決めていること
仮説:候補はあるが、まだ確かめている途中のこと
未決定:何を選ぶか、まだ答えが出ていないこと
要確認:判断するために、調べたり聞いたりする必要があること
「仮説」は、今のところの答えです。「要確認」は、その答えを判断するために確かめることです。そのため、ひとつの項目に両方を書く場合もあります。
たとえば、新しい商品を考えているなら、こう整理できます。
「今の取引先に販売する」は決定。「完成品として売れば喜ばれる」は仮説。販売価格は未決定。完成品での購入を望んでいるかは、お客様への要確認です。
こうしておくと、次に何を聞き、何を決めるかが見えます。
空欄を埋めることよりも、判断に必要なことがわかる一枚を目指します。
特徴の理由を聞くと、共通する考えが見えてきた
X社長との打ち合わせでは、家づくりの特徴をひとつずつ確かめました。
自然素材を使うのは、なぜか?
ご家族が、長く心地よく暮らせるようにするためです。
住宅の性能を高めるのは、なぜか?
安心して暮らし続けられるようにするためです。
何か月もかけて話を聞くのは、なぜか?
ご家族自身が、自分たちの暮らしに合う答えを見つけられるようにするためです。
棟数と地域を絞るのは、なぜか?
建てたあとも、責任を持って関わり続けるためです。
理由を聞いていくと、それぞれの特徴には共通する考えがありました。建物を完成させることに加え、その後のご家族の暮らしを大切にしているのです。
私は、その考えを表す言葉の案を、一枚にまとめて見せました。
ただし、この時点では私の仮説です。社長がどう受け止めるかを確かめる必要がありました。
納得したところと、引っかかったところを分ける
一枚を見たX社長の反応は、項目によって違いました。
お客様を誰と考えるかについては、はっきりした言葉が返ってきました。
「私たちのお客様は、お父さんでもないし、お母さんでもないんです。ご家族なんですよ」
ここは、会社として大切にしていることとして確認できました。
また、暮らしを重ねる中で、家が「我が家」になっていくという案には、こんな反応がありました。
「我が家っていうの、気づかなかったですね。でも本当そうです」
手ごたえはありました。ただ、共感したことと、会社の方針として採用することは別です。
この言葉は、仮説として残しました。
「よいと思う」から「判断に使える」まで確かめる
私は、その場で言葉を決めてもらうことはしませんでした。
「今決めなくていいです。腹落ちするかどうか、考えてみてください」
説明を聞いたときには、よい言葉に思えることがあります。それでも、自分で話そうとすると違和感が残るかもしれません。
この言葉で、自社の考えを説明できるか。
商品や提案を選ぶときにも、大切にしたいと思えるか。
X社長自身が判断に使える言葉なのかを、時間を置いて確かめることにしました。
一枚には、言葉の候補だけでなく、この確認事項も残します。
そうすれば、次の打ち合わせで「どうでしたか」と漠然と聞くのではなく、何を確かめる時間なのかを共有できます。
決まっていることを使えば、進められる準備もある
一枚は、まだ完成していません。
それでも、すべての作業を止める必要はありませんでした。
お客様を「ご家族」と考えることは確認できています。その考えをもとに、住んでいる方への取材で何を聞くかなど、準備を進められます。
一方で、仮説の言葉を、そのまま冊子の中心コピーやロゴ選びの固定条件にはしません。言葉の確認が必要な部分は、最終決定を待ちます。
何が決まっているかがわかると、進めてよいことと、確認を待つことを分けられます。
一枚に状態を書き添えるのは、そのためです。
自社の一枚をつくるときに
まずは、今わかっていることを、いつもの言葉で書いてみてください。最初から短く、きれいにまとめなくてもかまいません。
そのうえで、3つを確かめます。
1. 決まっていることと、案の段階のことを分ける
内容の横に「決定」「仮説」「未決定」「要確認」を添えます。書いてあるから決定済み、という誤解を減らせます。
2. 特徴や取り組みには、理由も書く
「自然素材を使う」「地域を絞る」といった内容だけでなく、なぜそうしているかを書きます。共通する理由が見つかれば、会社が大切にしていることを説明する手がかりになります。
3. 要確認には、確かめ方を書く
誰に聞くのか。どの数字を見るのか。いつ、誰が見直すのか。「要確認」と書くだけで終わらず、次の行動まで添えておきます。
一枚にするのは、次に決めることを見つけるため
X社長は、言葉の案を持ち帰って考えています。
ご家族をお客様とすることは確認できました。会社の考えを表す言葉は、まだ仮説です。それを自分の言葉として話し、判断に使えるかを、これから確かめます。
すべてが決まっていなくても、一枚に整理する意味はあります。
決まっていることがわかり、次に確かめることが見えれば、その一枚はすでに役立っています。
あなたの会社の一枚には、まだ仮のままなのに、決定事項のように書かれていることはないでしょうか。
→ 自社の一枚で、どこが「要確認」のままかを確かめる(準備中)
→ RBTDESIGNが、経営者とどのように一枚をつくるのかを知る(公式サイト)