4. 決められない悩み
経営判断ができないのはなぜ? その決断は、いくつの判断が束になっていますか
RBTDESIGN
経営判断ができない。
そう感じるとき、決断力や覚悟が足りないのだと考えがちです。
けれど、そうとは限りません。
一つの決断に見えて、その中に種類の違う判断がいくつか束になっていることがあります。
束のままでは、比べることができません。比べられなければ、決められない。
まずは、その決断の中に何本の判断が入っているのかを分けてみる。そこから始めると、止まっていた判断が動きやすくなります。
製造業を営むI社長の話から考えてみます。
半年たっても、進んでいなかったプロジェクト
I社長の会社は、機械加工を中心に、部品づくりを一貫して引き受けています。
社長には、ずっと気になっていることがありました。
ホームページで、自社にできることが伝わっていない。
加工できる範囲も、一貫して対応できる体制も、見た人にはわからない。
そこで、社員2人に任せて、ホームページを見直す社内プロジェクトを始めました。
外に丸投げするのではなく、社員に自社のことを考えてほしかったからです。
半年がたちました。
進み具合は、社長の感覚では、ほぼゼロ。
社員が怠けていたわけではありません。通常の仕事は、いつもどおり回っていました。ホームページの仕事だけが、手つかずのまま残っていたのです。
「もう一度、外の人に入ってもらって仕切り直したい」
そう考えたものの、どう進め直すかは決まらないままでした。
決められないとき、よくとられる方法
判断が止まったとき、よくとられる方法があります。
期限を切る。情報を集め直す。思い切って決めてしまう。誰かに任せる。
どれも、場面によっては有効です。
I社長も、年内に完成させるという目標を置いていました。絶対の期限というより、社員に時間を意識してもらうための目標です。
期限は、動くきっかけになります。
ただ、決断の中にいくつもの判断が入ったままだと、期限を切っても中身は分かれません。
情報を集めても、どの判断のための情報なのかがはっきりしない。
任せても、任された側が何を決めればいいのかわからない。
思い切って決めたとしても、残った判断があとから引っかかり、また迷いが戻ってくることがあります。
決められないのは、力が足りないからではなく、決めようとしているものの形のせいかもしれません。
「ホームページをどうするか」の中にあった3つの判断
I社長の話を聞いていくと、「ホームページをどうするか」の中に、3つの願いが入っていました。
社員に経験を積ませ、育てたい。
ホームページを完成させたい。
新しいお客様を増やしたい。
どれも大切です。けれど、この3つは種類が違います。
ひとつめは、人を育てるという目的。ふたつめは、形として残る成果物。3つめは、その先にある事業の成果です。
どれを最優先にするかで、次にとる手は変わります。
社員の成長を最優先にするなら、時間がかかっても社員に任せる意味があります。
完成を最優先にするなら、制作は外に頼むほうが早いかもしれません。
新しいお客様を最優先にするなら、見た目より先に、誰に何を伝えるかを決める必要があります。
一つの決断に見えたものが、実は3つの判断の束だった。
これでは、どれかを選ぼうとするたびに、ほかのふたつが引っかかります。
決められなかったのは、I社長の決断力の問題ではなかったのかもしれません。
分けても、物差しがそろわなければ決まらない
私はI社長に尋ねました。
「この3つのうち、いちばん大事なのはどれですか」
「まず社員のレベルアップ。次にホームページの完成。その先に、新しいお客様ですね」
答えは、はっきりしていました。
ただ、あとで振り返ると、これは大事さの順番ではなく、起きていく時間の順番だったのかもしれません。
社員が育ち、ホームページができ、お客様が増える。流れとしては自然です。けれど、その流れの中で何をいちばん守るのかは、まだ決まっていませんでした。
私はその場で、聞き直しませんでした。
判断を分けても、比べる物差しがそろっていなければ、順番は決まりません。
束をほどくときに、確かめる3つのこと
では、束になった判断は、どうほどけばいいのでしょうか。I社長との対話をもとに、次の3つを順に確かめてみます。
1. その決断で、実現したいことを全部書き出す
「ホームページを直す」のような一言で済ませず、その先に何を願っているのかを並べます。ひとつだけのこともあれば、3つ、4つ出てくることもあります。
2. 書き出したものの種類を見る
目的なのか。形として残る成果物なのか。事業の成果なのか。種類が違うものは、同じ一本の判断では扱えません。
3. 同じ物差しで、順番をつける
「今回、何をいちばん守るのか」という一つの物差しで並べます。時間の順番や、やりやすさの順番と混ぜないことです。
ここまで来ると、決めなければならないことが、一つの重い塊ではなく、いくつかの小さな判断として見えてきます。
束のまま渡された仕事は、受け取った側も動けない
I社長は、社員についてこう話していました。
「やる気はあっても、動かない。」
社員が通常の仕事を優先したのは、ホームページを避けていたからではないでしょう。
何をすればいいかわからない仕事より、やるべきことがはっきりした仕事を選ぶ。それは、ごく自然な判断です。
社長の中で束になっている判断は、そのまま社員にも渡ります。
社長が決めきれていないことを、社員が決めることはできません。
経営判断ができない状態は、社長一人の悩みにとどまらず、会社の動きにも表れることがあります。
I社長の会社で、次に確かめること
I社長の会社では、3つの願いの優先順位はまだ決まっていません。
ただ、何を決めればいいのかは見えてきました。
社員の経験、ホームページの完成、新しいお客様。
この3つのうち、今回のプロジェクトで最優先するものはどれか。時間の順番ではなく、大事さの順番で確かめる。
それが決まれば、社員に何を任せ、外に何を頼むのかも決めやすくなります。
あなたの決断には、何本の判断が入っていますか
いま決められずにいることを、一つ思い浮かべてみてください。
その決断は、本当に一つでしょうか。
中をのぞくと、目的と、成果物と、事業の成果が混ざっているかもしれません。
分けてみたら、何本の判断が現れるでしょうか。
そして、それぞれを同じ物差しで比べられているでしょうか。
どれを先に決めるかは、あなたにしか決められません。
ただ、束をほどくだけで、決められなかったものが、決められる大きさに変わることがあります。
→ 分けた判断が、事業全体のどこにつながっているのかを見る(準備中)
→ RBTDESIGNについて(公式サイト)