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4. 決められない悩み

経営判断に迷うのはなぜ? 正しい理由が重なるときに、先に決めること

RBTDESIGN

2026/5/12 03:00

経営判断に迷うとき、情報や決断力が足りないと思うことがあります。

けれど実際には、売上、利益、品質、ブランドらしさ、社員の思いなど、どれも無視できない理由が重なっていることが少なくありません。

どれも正しいからこそ、簡単には決められないのです。

迷いを抜けるために必要なのは、正しい理由をさらに増やすことではありません。

「今回の判断では、何をいちばん優先するのか」を先に決めることです。

雑貨を扱うB社長の例をもとに、考えてみます。

商品を残すか、やめるか。その基準が決まらない

B社長の会社では、将来への危機感から、自社ブランドを立ち上げてきました。

もともとは、ほかのブランドの商品を請け負うOEMという仕事が中心でした。だからこそ、自社の名前で選ばれる事業を育てることには、大きな意味がありました。

一方で、商品を残すのか、やめるのかという判断では、基準がまだ定まっていませんでした。

B社長は、使い心地や機能で選ばれるブランドにしたいと考えています。

ただ、商品の判断にはデザイン性、利益、在庫など、ほかにも大切な理由が関わります。

それぞれを大事にしようとすると、何を基準に判断すればよいのかが見えにくくなります。

これは、特別な会社だけの問題ではありません。商品、採用、投資、新規事業など、経営には同じように複数の正しさが重なる判断が多くあります。

迷ったとき、情報を増やしても決まらない理由

判断に迷うと、情報を集め直したくなります。

比較表をつくる。点数をつける。詳しい人に意見を聞く。どれも役に立つ方法です。

ただし、情報は判断の材料であって、優先順位そのものを決めてくれるわけではありません。

たとえば、「使い心地」「デザイン性」「利益」を並べても、どれに重みを置くかが決まっていなければ、答えは出ません。

表を細かくしても、優先順位がなければ、正しい理由が増えるだけです。

その場で社長が決めることにも、意味はあります。

ただ、判断の理由が共有されないままでは、次に似た判断が来たとき、また最初から迷うことになります。

大切なのは、答えだけでなく、「なぜ今回はそれを優先したのか」を残しておくことです。

迷いの手前に、まだ言葉になっていないことがある

B社長と話すなかで、私は二つの話を分けて考えました。

一つは、「商品をどう判断するか」。もう一つは、「このブランドは、誰にどんな価値を届けるのか」です。

商品を残すか、やめるかで迷っているように見えても、その手前でブランドの価値がまだ言葉になっていないことがあります。B社長自身も、届けている価値が明確ではないと感じていました。

価値が言葉になっていなければ、使い心地、デザイン性、利益は、すべて同じ重さの「正しい理由」として並びます。意見がぶつかるのは自然なことです。

経営判断に迷うのは、判断する力が弱いからとは限りません。何を優先するための判断なのかが、まだ決まっていないのかもしれません。

優先するものは、判断ごとに決める

では、何を優先するのかは、どう決めればよいのでしょうか。

会社全体で、たった一つの正解を決める必要はありません。判断の目的が違えば、優先するものも変わります。

同じ商品について考える場合でも、目的によって見方は変わります。

  • ブランドを象徴する商品なら、ブランドらしさを優先する

  • 定番商品なら、利益や在庫の回転を優先する

  • 新しく試す商品なら、お客様の反応を確かめることを優先する

判断のたびに、次の3つを言葉にすると考えやすくなります。

1. 今回の判断は、何のための判断か

売上を伸ばすためか。ブランドを育てるためか。在庫を減らすためか。目的が変われば、優先するものも変わります。

2. 今回、いちばん上に置く理由はどれか

正しい理由が複数あるなら、順番をつけます。すべてを同じ重さで抱えたままでは、比べられません。

3. 優先しない理由を、どこまで守るか

優先しなかった理由を、捨てるわけではありません。たとえば利益を優先する場合でも、ブランドの印象を大きく損なうものは扱わない、といった境界線を決めておきます。

この3つが言葉になれば、意見が違っても、「どちらが正しいか」だけを争わずに済みます。

「今回は何を優先すると決めたのか」に戻って、判断を進められるようになります。

B社長の会社で、いま確かめていること

B社長の会社ではいま、すぐに商品を仕分ける前に、3つのことを別々に確かめています。

会社として何を大切にしたいのか。ブランドで誰にどんな価値を届けたいのか。社員は、その価値をどう受け取っているのか。

3つを並べ、重なるところと、ずれているところを見る。そのうえで、商品を一つずつ判断の基準に当てていきます。

商品を残す・やめる基準は、まだ確定していません。

それでも、次の判断を「何を優先するのか」から考え始めることはできます。基準は、先に完成しているものを使うだけではありません。判断を重ねながら、少しずつ明確にしていくものでもあります。

あなたの会社の、次の判断で優先するものは何ですか

経営判断に迷うのは、正しい理由がいくつも並んでいるからかもしれません。

いま迷っている判断を、一つ思い浮かべてみてください。

まずは、その判断に関わる理由を書き出します。売上、利益、品質、ブランド、お客様の反応、社員の思いなどです。

そのうえで、「今回は、どれをいちばん上に置くのか」を決めます。

ここが決まれば、迷いが残っていても、判断は前に進みます。

ただ、何を優先するかをどうしても決めきれないこともあります。そのときは、判断の手前にある「会社として何を大切にするのか」が、まだ言葉になっていないのかもしれません。

→ 自分の会社の判断が、どこで止まっているのかを確かめる(準備中)

→ 判断同士が、事業全体でどうつながっているのかを見る(準備中)