8.UNLOCK MODEL
MODEL014 ある手芸業の憂鬱|“和柄生地”の次が決められない
UNLOCK
「売れていないわけではない。でも、このままでいい気もしない。」
和柄生地を中心にEC展開してきた、ある岡山県の手芸用品会社の話です。
10年以上、自社ECを軸に運営。豊富な品揃えと品質へのこだわりで、固定ファンも多い。特に50〜70代の手芸愛好家からの支持は厚く、老舗メーカーとの信頼関係も強みでした。
しかし近年、状況が変わり始めます。
メーカー直販の増加。価格競争。細かい注文対応による利益圧迫。売上はあっても、“積み上がりにくい構造”になってきた。
だからこそ、新しい商品シリーズを考え始めます。
初心者向けキットか。
若年層向け雑貨か。
海外向け和小物か。
クラフト層向け素材展開か。
アイデアは出ます。可能性もある。しかし、最後だけが決まらない。
なぜ「次の商品」が決まらないのか?
ここで起きていたのは、商品企画の不足ではありませんでした。問題は、“比較できないものが混ざっていた”ことです。
例えば、
「若年層を取り込みたい」
「既存顧客は大切にしたい」
「利益率も上げたい」
「布の魅力は残したい」
「作業負荷は増やしたくない」
これらは全部正しい話です。
ただ、本来は別軸で考えるべきものが、同じ場所で比較されていました。
さらに、
“布を売る”
“完成品を売る”
“体験を売る”
“世界観を売る”
という事業レイヤーも混在していました。
つまり、「商品」の話をしているようで、実際には“事業構造”の話まで混ざっていたのです。
その結果、「どれも可能性がある」に見えてしまい、判断が止まる。これは能力不足ではありません。LOCK状態です。
RBTDESIGNの見立て
まず行ったのは、「若者向け商品を考える」ことではありませんでした。
先に、混ざっているものを分けました。
誰を広げたいのか
何を売りたいのか
何を残したいのか
どこで利益を出したいのか
これを分解していくと、実は会社の強みは“和柄”そのものではなく、
「大量の布から、“組み合わせ”を提案できる編集力」
にあることが見えてきました。
さらに粒度も揃えました。
“海外展開”と“初心者向けキット”は、同じ比較対象ではありません。片方は販路戦略。もう片方は商品形状です。
この粒度を揃えることで、比較可能状態に戻していきます。
最後に固定したのは軸です。
「布を売る会社」なのか。「つくる楽しさを届ける会社」なのか。
ここが曖昧なままだと、商品企画は永遠にブレ続けます。
次の一手
次の一手はシンプルでした。
“初心者でも完成体験できる小型キットシリーズ”を先に検証する。
理由は明確です。
若年層・初心者層は、「布そのもの」ではなく、“完成イメージ”で判断するからです。一方で、既存の強みである「豊富な生地」「センス」「EC運営力」は、そのまま活かせる。
つまり、“今ある資産”と“新しい顧客”の接続点として、もっとも構造的に無理が少なかったのです。
最後に
もし今、あなたの会社でも、
今の顧客を深掘るべきか
新しい顧客を広げるべきか
商品ではなく売り方を変えるべきか
この3つが同時に頭にあるなら、少し注意が必要かもしれません。
それは「考えていない」のではなく、“比較できないものが混ざっている状態”だからです。
まず1つ選んでください。そして、その1つだけを基準に、他を見直してください。もし選べないなら、それ自体がLOCKです。
RBTDESIGNでは、経営者の判断がどこで止まっているのかを整理する無料診断も行っています。
※LOCKとは、判断が止まっている状態のことを指します。
本記事は、RBTDESIGNの実際の支援事例ではありません。公開されていた事業相談をもとに、企業が特定されないよう一部情報を変更し、RBTDESIGNのUNLOCKがどのように事業の「判断の詰まり」を見立てていくのかを、具体的に理解していただくためのモデルとして構成しています。