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2. アイデアが形にならない悩み

事業アイデアがまとまらないのはなぜ? 「お客様の変化」と「自分が大切にしたいこと」が重なる場所を探す

RBTDESIGN

2026/3/21 03:00

アイデアが出ないのではない。むしろ、出すぎて決められない。

新規事業を考えていると、そんな状態になることがあります。

候補を書き出す。人にも相談する。市場も調べる。

それでも、一つにまとまらない。

そんなときは、アイデアを増やすより先に、二つのことを確かめたほうがいいかもしれません。

お客様は、どう変わりたいのか。

そして、もうひとつは

自分は、この事業で何を大切にしたいのか。

事業の中心は、このふたつが重なるところにあります。

「全部並べておきたい」と話したM社長

M社長は、建築補修を手がける会社を経営しています。

信頼されていて仕事は途切れません。ただ、M社長はいつも現場にいて、事務所に戻ったら翌日の段取りまで、すべて自分で組んでいました。

そこで、このままでは疲弊するとして新たに導入したのが、素材の表面を守る画期的なコーティング技術です。

この技術は、いろいろなところに使えます。

コンクリートの床。トラックの荷台。木のデッキ。洗面台。和紙。ガードレール。高い技術はきっと、海外でも受け入れられると考えられます。

初めて話をうかがったときも、用途は次々に広がりました。

では、どれをやるのか?

そう聞くと、M社長はこう答えました。

「今のところは、全部並べておきたいんです」

候補がないのではありません。

多すぎて、選べないのです。

表をつくっても、決まらなかった

そこで、候補を比べるための表をつくることにしました。

市場の大きさ。

始めやすさ。

儲かるかどうか。

いくつかの項目を並べて、○・△・×をつけていきます。表はきれいに埋まりました。それでも、決まりませんでした。

評価の高い候補はあります。でも、「これをやろう」とはならない。

表を見直すと、ふたつの問題が見えてきました。

ひとつ目は「お客様に聞いていない」

まだ誰にも話を聞いていない用途にも、○や×がついていました。

経験や、想像力を働かせてつけた評価です。

そこで私は聞きました。

「まだ聞いていないなら、ここは○でも×でもなく、『?』ではないでしょうか」

すると、表の意味が変わりました。

○や×は、確かめたこと。?は、まだ分からないこと。

  • その用途で、本当に困っている人がいるのか。

  • 何に困っているのか。

  • どうなれば助かったと感じるのか。

そこは、まだ分かっていなかったのです。つまり、お客様がどう変わりたいのかが、まだ見えていませんでした。

ふたつ目は「自分の基準ではなかった」

もうひとつは、評価項目そのものです。

表の項目は、私が例として出したものでした。M社長自身が決めたものではありません。

たとえば「仕組み化しやすいか」という項目。

M社長は、「決まった寸法で加工しやすいか」という意味で見ていました。

一方、私が考えていたのは、「社長が毎回動かなくても仕事が続いていくか」という意味でした。

同じ言葉でも、意味が違います。

つまり、表は埋まっていても、「自分は何を大切にして、この事業を選ぶのか」は、まだ決まっていなかったのです。

実は、答えは最初に出ていた

M社長が大切にしたいことは、最初の面談ですでに一度出ていました。

新しい事業を何のためにやるのか。そう聞いたとき、M社長はこう話していました。

「仕組みをつくって、ちゃんと経営者になりたいんです」

今の仕事は、自分が現場にいないと回らない。次の事業では、それを繰り返したくない。

これは、かなり大切な判断基準です。

ところが、候補を比べる表には、この考えが入っていませんでした。

一度言葉にしただけでは、判断には使えません。

「自分は何を大切にするのか」を、選ぶ基準まで落とし込む必要があります。

「できること」だけでは、事業は決まらない

新しい技術を手にすると、「これで何ができるか」を考えます。

もちろん、それは大切です。

でも、「できること」だけで考えると、候補はどんどん増えていきます。

M社長もそうでした。

  • 床にも使える。

  • トラックにも使える。

  • 木にも使える。

  • 和紙にも使える。

できるから、候補になる。

でも、できることと、事業として選ぶことは別です。

選ぶためには、もうふたつほど必要です。

ひとつは、

お客様が、どう変わりたいのか。

もうひとつは、

自分が、この事業で何を大切にしたいのか。

このふたつが重なるところを探していきます。

お客様だけでも、自分だけでも足りない

お客様の困りごとだけを見ていると、「求められるなら何でもやる」になりやすくなります。

仕事は増えても、社長の負担まで増えてしまうかもしれません。

反対に、自分の思いだけを見ていると、「やりたいけれど、誰が必要としているのか分からない」という状態になります。

たとえば、M社長には「地元の伝統和紙を残したい」という思いがあります。

これは、M社長の側の話です。

一方で、「長持ちする和紙の商品が欲しい人がいる」のであれば、それはお客様の側の話です。

似ていますが、同じではありません。

ふたつを分けて見るからこそ、どこが重なっているのか?まだ確かめる必要があるのか?

それが見えてきます。

あの表の役割も変わった

M社長は、まだ市場をひとつに決めていません。

それでいいと考えています。

会議の終わりに、M社長はこう話しました。

「そしたら、”?”がついたところを確認すれば前に進めるって、やることが明確になりますね」

分からないことは、想像で埋めない。お客様に聞く。

そして、自分の側では、「何を大切にして、この事業を選ぶのか」を考え直す。

表の役割も変わりました。

点数の高い案を選ぶための表から、まだ分からないことを見つける表へ。

候補を全部捨てる必要もありません。

まずは、どこから確かめるかを決めればいい。

M社長の新しい事業は、今その段階にあります。

あなたのアイデアは、どこから生まれていますか

いま並んでいるアイデアを、ひとつずつ見てみてください。

それは、

お客様の「こう変わりたい」から生まれたものでしょうか。

あなたが大切にしたいことから生まれたものでしょうか。

それとも、

「自分たちには、これができる」から生まれたものでしょうか。

「できること」から始めても構いません。ただ、そこにふたつの問いを加えてみます。

お客様は、どう変わりたいのか。

自分は、この事業で何を大切にしたいのか。

お客様の側が分からなければ、聞きに行く。自分の側が分からなければ、そこを言葉にする。

両方が重なる場所は、思っているほど多くないかもしれません。

でも、その重なりが見えてくると、たくさんのアイデアの中から、次に進むものを選びやすくなります。


アイデアの手前で、事業のどこがまだ決まっていないのかを見る(準備中)

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