2. アイデアが形にならない悩み
何を事業にすべきか迷ったら? 4つの条件は、同じ仕事で成り立ちますか
RBTDESIGN
何を事業にすべきか。候補はあるのに、なかなか決められないことがあります。
得意なことを選べばよいのか。やりたいことを優先してよいのか。お客様に求められていても、仕事として続けられるのか。
迷ったときは、
「できる」「やりたい」「求められる」「成立する」の4つを、一つの候補に重ねてみます。
どこまで確かめられていて、何がまだわからないのか。そこを分けると、次に考えることが見えてきます。
設計事務所を営むH社長の相談を例に考えてみます。
無償で引き受けてきた仕事を、事業にしたい
H社長は、施設の設計を中心に手がける設計事務所の代表です。
設計に加えて、会社の理念や組織についても相談を受けていました。理念をどう言葉にするか。ロゴやサインをどうするか。組織をどうつくり、事業計画をどう立てるか。
H社長は、そうした相談にも応えてきました。
ただ、その多くは無償だったり、設計料との区別があいまいだったりしました。
設計以外の相談が増えるなかで、これらの支援をきちんとサービスにしたいと考えていたのです。
相談の出発点は、サービスの内容を整理し、料金を決めることでした。
当時は、H社長が経験をもとに案件ごとに見積もっていました。何をどこまで引き受け、いくら受け取るのか。その説明を、ほかの人もできる形にする必要がありました。
条件を一つずつ見ると、選びにくくなることもある
事業の候補を考えるとき、強みや意欲、お客様の困りごと、利益が出るかどうかを確かめるのは大切です。
ただ、条件ごとに○×をつけても、判断が進まないことがあります。
たとえば、得意な仕事でも、これから長く続けたいとは思えない。
やりたい仕事で、相談も来ている。でも、かかる時間に見合う料金を受け取れるかはわからない。
どちらも、よい面はあります。だからこそ、○の数を数えるだけでは選びにくいのです。
合計点がいちばん高い候補にも、事業を続けるうえで大きな課題が残っているかもしれません。
ひとつの長所で、ほかの条件の不足を補えるとは限らないからです。
4つの条件が、同じ仕事の中で成り立つか
RBTDESIGNでは、4つの条件がどこまで重なるかを考えます。「重なる」とは、同じ仕事の中で、次の4つが成り立つことです。
できる:今の会社の力で、お客様に提供できるか
やりたい:経営者として、続ける意味を感じられるか
求められる:お客様が、その支援や変化を望んでいるか
成立する:必要な対価を受け取り、無理なく続けられるか
できて、求められていても、続ける意味を感じられなければ、引き受けるほど負担になることがあります。
やりたくて、求められていても、提供する力が足りなければ、体制を整える必要があります。
できて、やりたくて、求められていても、対価が見合わなければ、続けるほど会社の余裕がなくなるかもしれません。
はじめから、すべてがそろった候補ばかりではないでしょう。
だからこそ、今ある候補のどこが確かで、どこを整える必要があるのかを見ます。
足りない条件がわかれば、支援の範囲を変える、体制を整える、お客様に確かめる、といった次の判断につながります。見送るという選択もできます。
H社長の相談では、「成立する」がまだ見えていなかった
H社長が引き受けてきた支援を、この4つに当てはめてみます。
「できる」には、実際に相談に応えてきた経験があります。
「やりたい」にも、H社長の考えがありました。H社長にとって、建物の設計は、お客様を支えるための手段でもあったのです。
建物をきっかけに、お客様の事業や組織、そこで働く人が育っていく。その過程にも関わりたいと考えていました。
人が持つ可能性を引き出すことを、自社の強みとして捉えていたのです。
「求められる」には、設計以外の相談が増えているという手がかりがあります。ただ、相談されることと、有料でも頼んでもらえることは、分けて確かめる必要があります。
まだ形が見えていなかったのは「成立する」です。どこまで支援し、何に対して料金を受け取るのかが、決まっていませんでした。
ここまで聞くと、料金表をつくれば前に進めそうに思えます。
料金の前に、サービスの範囲を考える
ところが、話の中には、料金より先に考えたい問いがありました。
この支援を、設計とは別のサービスとして届けるのか。
それとも、H社長が考える設計の一部として届けるのか。
どちらにするかで、お客様への説明や料金の考え方が変わります。
別のサービスにするなら、設計を頼まないお客様にも届けるのかを考えます。設計に含めるなら、どこまでを設計の仕事とし、その価値をどう料金に反映するかを考えます。
何に対して料金を受け取るのかがあいまいなままでは、金額だけを決めても説明しにくいのです。
私は、床や壁や天井だけでなく、その間にある人や組織の営みまで含めて空間設計と考えられるのではないか、と問いかけました。
H社長も、その考えに同意していました。
もともとH社長が大切にしてきたことを、言葉にして確かめるやり取りでした。
一方で、その考えを具体的なサービスの形にすることには、難しさを感じていました。
引き受けてきた仕事も、やりたい理由もあります。それらを、会社としてどこまで提供するか。その整理が、料金を考える前に必要だったのです。
決められない条件から、一つ前の問いへ
何を事業にすべきか迷う理由は、会社によって違います。
提供する力が足りない場合もあれば、お客様が何を求めているか、まだ確かめられていない場合もあります。
H社長の相談では、サービスの範囲があいまいなことが、料金を決めにくくしていると考えられました。
このように、ある条件を確かめようとして進まないときは、その前に決めることが残っている可能性があります。
たとえば、利益が出るかを考えるにも、何をどこまで引き受けるかで、必要な時間や人手は変わります。サービスの範囲と料金は、つながっているのです。
4つの条件を確かめる順番は、どの会社でも同じとは限りません。
一つの条件で止まったら、その判断に必要なことが決まっているかを見直してみます。
この相談で見えてきた、考える順番
相談の時点で、料金表が完成したわけではありません。
見えてきたのは、具体的なサービスにするために考える順番でした。
まず、会社として何を届けたいのか。次に、その中で今回の支援をどう扱うのか。それをもとに、サービスの内容や範囲を整理し、料金を考えるという順番です。
H社長には、すでに引き受けてきた仕事と、お客様に届けたい価値がありました。
それを言葉にし、サービスの形として比べられるようにすることが、次の課題でした。

あなたの候補は、どこまで確かめられていますか
いま、事業にしようか迷っている候補を、一つ思い浮かべてみてください。
「できる」「やりたい」「求められる」「成立する」。
その候補では、どこまで確かめられているでしょうか。
まだわからない条件があるなら、何を確かめると判断できそうでしょうか。その前に、決めておく必要があることはないでしょうか。
何を事業にするかを、最後に決めるのはあなた自身です。
候補を選ぶ前に、選べるだけの情報や考えがそろっているかを見てみる。 それも、判断を進めるための一歩になります。
→ 自社の判断が、どこで止まっているのかを確かめる(準備中)
→ 4つの条件が、事業全体のどこにつながっているのかを見る(準備中)