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3. 構造が見えない悩み

事業の構造がわからないときは? 施策をつなぐ「だから」がどこで途切れているかを見る

RBTDESIGN

2026/3/29 03:00

売上も、商品も、お客様もある。毎日やっていることも説明できる。

それなのに、「あなたの事業は、どんな仕組みで成り立っていますか」と聞かれた途端に、うまく答えられない。

事業の構造がわからないとき、足りないのは情報や知識とは限りません。

見えていないのは、商品・営業・Webといった施策をつなぐ「だから」なのかもしれません。

誰に、何を届けたいのか。だから、この商品をつくる。だから、この売り方を選ぶ。だから、こうした発信をする。

事業の構造は、この「だから」のつながりから見えてきます。

施策を一つずつ眺めているだけでは、そのつながりには気づきにくいものです。

「SNSが弱い」という最初の相談

O社長は、湖でカヌーなどの水上アクティビティを営む会社を経営しています。

とにかく集客が足りない。SNSを活かせていない。団体のお客様を増やしたい。カフェとの連携を強めたい。現場のスタッフが自分で動けていない。

いろんな課題が見えている状態です。そしてひとつひとつを見ると、どれも取り組むべき課題に思えます。

ところが、面談でO社長の話を聞くと、少し違う問題が見えてきました。

O社長自身は、SNSや集客が本当の問題だとは考えていなかったのです。

スタッフが迷う。迷うから、自分で判断できない。判断できないから、社長に確認がくる。そして、結局は社長が全部やることになる。

本当に困っていたのは、このくり返しでした。

では、なぜスタッフは自分で判断できないのでしょうか。

項目を整理しても、構造が見えるとは限らない

事業の構造を理解したいとき、よく使われるのが、ビジネスモデルの図やフレームワークです。

顧客は誰か。何を提供するのか。どう販売するのか。どこで収益を得るのか。

項目を一つずつ埋めていけば、事業の全体像を一枚にまとめることができます。

とても便利な方法です。

ただ、項目が埋まったからといって、事業の構造まで理解できるとは限りません。

例えば、O社長の会社なら、次のように書けるでしょう。

お客様は観光客。商品はカヌー体験。販売経路はSNSや現地での案内。

間違ってはいません。

でも、これをスタッフに見せても、目の前のお客様に何を提案すればよいのか、どんなときに自分で判断してよいのかは、分からないままかもしれません。

それぞれの項目が、どうつながっているのかが見えないからです。

項目がそろっていることと、項目どうしの関係が見えていることは、別なのです。

事業の構造は「だから」のつながりに表れる

事業には、さまざまな施策があります。

  • ホームページが古くなったから、つくり直す。

  • 展示会で見込み客と出会えるから、出展する。

  • 既存商品の売上が伸びないから、新商品を開発する。

どれにも、それなりの理由があります。

ただ、ここで少し考えてみてください。

なぜ、その商品が必要なのでしょうか。

なぜ、そのお客様に届けたいのでしょうか。

だから、なぜ展示会に出るのでしょうか。

だから、ホームページでは何を伝えるのでしょうか。

こうして理由をたどっていくと、どこかで言葉が止まることがあります。

例えば、ある製造業の会社が、新商品を開発し、展示会に出展し、ホームページも新しくしているとします。

3つとも、それぞれの担当者が一生懸命に進めています。

でも、新商品が解決するお客様の困りごとと、展示会で伝えていること、ホームページで訴えていることが、別々だったらどうでしょう。

施策ごとに成果が出ることはあっても、事業全体として何を目指しているのかは、見えにくくなります。

反対に、3つの施策が同じお客様の困りごとを解決するためにつながっていれば、それぞれの役割が明確になります。

もちろん、異なるお客様に向けた複数の事業を持つ会社もあります。すべての施策が、同じ目的に向かう必要はありません。

大切なのは、それぞれの施策が、何のために存在し、ほかの施策とどう関係しているのかを説明できることです。

その関係を確かめるために役立つのが、「だから」という言葉なのです。

O社長の湖で、「だから」をつないでみる

O社長との面談で話が深まったのは、SNSではなく、湖そのものについて話し始めたときでした。

O社長にとって、その湖は単なる観光地ではありませんでした。

湖はダム湖で、その成り立ちには、土地の暮らしの記憶がある。そして今も、下流の人たちの生活を支える水をたたえている。

そんな場所でした。

「今は、ただカヌーを貸す場所に近いんです」

O社長は、そう話しました。

本当は、湖で過ごす時間そのものを、もっと豊かな体験にしたかったのです。

ここから「だから」をつないでみます。

この湖には、土地の暮らしとつながる物語がある。

だから、 カヌーを貸すだけではなく、湖で過ごす時間そのものを体験として届けたい。

だから、 家族でゆっくり過ごしたい人たちに来てほしい。

だから、 カヌーだけで終わらず、カフェでの休憩も含めた半日のコースを考える。

だから、 食事やサイクリング、温泉まで楽しめる一日のコースにも広げていく。

だから、 カフェや温泉施設、宿泊施設との連携が必要になる。

こうしてつないでみると、最初に並んでいた課題の見え方が変わってきます。

カフェとの連携は、単に売上を増やすためではありません。湖で過ごす体験を豊かにするために、必要な役割を持っています。

SNSも同じです。

ただカヌーの楽しさを発信するのか。それとも、湖で家族と過ごす一日の魅力を伝えるのか。目指すものによって、発信する内容は変わります。

ばらばらに見えていた施策が、一つの考え方からつながり始めるのです。

ただし、この「だから」がつながっただけで、すべてが正しいと決まったわけではありません。

本当に家族連れが求めているのか。コースとして成り立つのか。協力してくれる施設があるのか。

そこは、これから確かめる必要があります。

それでも、何を確かめればよいのかは、以前より明確になります。

「だから」がつながると、施策の役割だけでなく、次に確かめることも見えてくるのです。

スタッフが自分で判断できなかった理由

もう一つ、大切なことがあります。

O社長が困っていた、スタッフの判断についてです。

例えば、お客様から「小さな子どもと一緒でも楽しめますか」と聞かれたとします。

もしスタッフが、カヌーを貸すことだけを仕事だと考えていれば、年齢制限や利用条件を説明して終わるかもしれません。

一方、家族で湖の一日を楽しんでもらうことを目指していると分かっていれば、カヌー以外の過ごし方も提案しようと考えられます。

安全基準や料金、対応できる範囲など、具体的なルールを覚えることも必要です。ただ、そのルールをどう使うかを判断するには、何を大切にする事業なのかを知っていることが役に立ちます。

O社長の頭の中には、湖をどういう場所にしたいのかという考えがありました。

でも、それが十分に言葉になっていなければ、スタッフは目の前の判断を何に照らせばよいのか分かりません。

社長に確認するしかなくなるのも、理解できます。

スタッフの能力や意欲だけの問題ではなく、判断のよりどころが共有されていないことも、原因の一つかもしれないのです。

「だから」が途切れた場所を探してみる

自社の事業でも、同じように確かめることができます。

最初から事業全体を整理する必要はありません。いま困っている施策を、一つ選んでみてください。

1. いま困っていることは何か

SNS、ホームページ、営業、新商品。目の前の悩みから始めます。

2. それは、何のためにやろうとしているのか

例えば「SNSを強化したい」なら、誰に何を伝えたいからなのかを考えます。

3. そのためには、何が先に決まっている必要があるのか

誰に伝えるかを決めるには、誰にどんな価値を届ける事業なのかが明確になっている必要があります。

4. そこが決まれば、元の施策を判断できるか

判断できるなら、そのつながりが不足していたのかもしれません。まだ決められないなら、さらに手前にある理由をたどってみます。

こうしてさかのぼると、施策そのものが問題なのか、それより前に決めることがあるのかを見分けやすくなります。

ただし、すべての問題が事業の構造にあるわけではありません。

発信の技術が不足しているだけなら、その技術を身につけることが必要です。

集客の仕組みは明確でも、実行する人が足りない場合もあるでしょう。

大切なのは、何でも構造の問題にすることではなく、実際にどこでつながりが途切れているのかを見つけることです。

O社長の現在地

面談では、O社長といくつかの方向性を確認しました。

まず、SNSの強化から始めるのではない。

なぜこの事業をやるのか。誰に来てほしいのか。どんな体験を届けたいのか。

そこを言葉にする。

家族連れを中心に、半日から一日、さらに宿泊へと体験を広げていく。

そのうえで、前半は事業の目指す姿を整理し、後半は実際にコースを販売しながら確かめていく。

スタッフが自分で判断できる状態も、目指す姿の一つです。

O社長が本当に求めていたのは、SNSの運用方法だけではありませんでした。

社長一人が抱え込まず、チームで事業を前へ進められる状態です。

そのためには、施策を増やす前に、施策が何のためにつながっているのかを共有することが必要でした。

事業の構造を見直すことは、きれいな事業計画をつくることだけが目的ではありません。

日々の判断を、社長だけでなく、ほかの人もできるようにすることにもつながっていきます。

あなたの事業の「だから」は、どこまで続きますか

いま取り組んでいる施策を一つ、思い浮かべてください。

それは、何のために行っていますか。

なぜ、その方法を選んだのでしょうか。

その手前には、どんな判断があるのでしょうか。

「だから」をたどっていくと、すらすら説明できるところと、言葉に詰まるところがあるかもしれません。

最後までつながるなら、すでに判断の筋道は見えているのかもしれません。

途中で止まるなら、そこが次に考える場所です。

事業の構造を理解するために、最初からすべてを整理する必要はありません。

まずは、一つの施策から「だから」をたどってみる。

事業がばらばらに見えるとき、足りないのは新しい施策ではなく、施策どうしをつなぐ理由なのかもしれません。

あなたの事業では、「だから」がどこまで続いているでしょうか。


事業のどこで「だから」が途切れ、判断が止まっているのかを確かめる(準備中)

いま困っている施策が、事業全体のどこにあたるのかを見る(準備中)