2. アイデアが形にならない悩み
新規事業の考え方に迷ったら。「何を決めたいのか」から考えてみる
RBTDESIGN
新規事業の考え方を調べると、いろいろな方法が見つかります。
市場を調べる。お客様の困りごとを聞く。小さく試す。仮説を立てて検証する。
どれも大切な考え方です。
それでも、「私の場合は、何から考えればいいのだろう」と迷うことがあります。
そんなときは、方法を探す前に、ひとつだけ確認してみてください。
私は、この新規事業について、何を決めたいのか。
新規事業は、それ自体が目的ではありません。会社が何かを実現するための、ひとつの手段です。
だからこそ、考え方を選ぶ前に「何を決めたいのか」が見えていることが大切です。
「上流はだいたい分かっている」と話していたD社長
D社長は、一人でものづくりの工房を営んでいます。
雑貨の販売など、これまでにもいくつかの仕事を手がけてきました。そして半年ほど前、素材から製品をつくる仕事と、その工程を体験してもらう新しい事業を始めました。
本人の言葉では、「見切り発車」だったそうです。
最初の相談は、ブランドやホームページ、SNS、予約までを一貫して整えたいというものでした。
「事業の上流は、だいたい分かっているんです」
そう話していたので、表面だけを見れば、次に必要なのは見せ方や集客の整理に見えます。
けれど、話を聞いていくと、少し違う場所に迷いがありました。
方法が悪いのではなく、決めることが見えていない
新規事業では、よく市場を調べたり、お客様の声を聞いたり、小さく試したりします。ビジネスモデルを整理することもあります。
どれも役に立ちます。
ただし、これらの方法には共通する前提があります。
何を判断するために、その方法を使うのかが分かっていることです。
たとえば「小さく試す」としても、何を確かめたいのかが決まっていなければ、結果を見ても判断できません。
お客様の声を集めても、何を決めるために聞いているのかが曖昧なら、情報だけが増えていきます。
つまり、考え方が間違っているのではなく、考え方を使う先がまだ決まっていないことがあります。
ここを見落とすと、方法を学ぶほど迷いが増えてしまいます。
「新規事業を考えたい」では、まだ決められない
「新規事業を考えたい」
とても自然な言葉です。
けれど、このままでは、何を決めればいいのかが分かりません。
少し言い換えると、見え方が変わります。
「この新規事業を始めるのか」
「このまま続けるのか、形を変えるのか」
「何のために、この事業をやるのか」
ここまで言葉にできると、次に考えることも変わります。
始めるかどうかを決めたいなら、需要や自社の条件を確かめる必要があります。
何のためにやるのかが曖昧なら、市場を見る前に、会社として何を実現したいのかを考える必要があります。
困っている場所と、判断が止まっている場所は、同じとは限りません。
これは、新規事業を考えるときに覚えておきたいことのひとつです。
「利益は、どこで出そうとお考えですか」
D社長との対話で、私は二つのことを聞きました。
「なぜ、Web制作会社ではなく、一緒に考える人を探しているんですか」
「利益は、どこで出そうとお考えですか」
するとD社長は、こう話しました。
「どうやって成り立たせるのかが、いちばん大事なところのはずなのに、いちばん後回しになっているんです」
そして、「今は、動けなくなっている状態です」とも話していました。
さらに聞いていくと、新しい事業の中には、いくつもの思いが入っていました。
製品をつくること。体験を届けること。作品をつくること。地域を元気にすること。その土地の手仕事を残すこと。
どれも大切です。
ただ、同じ種類の話ではありません。
「売るもの」もあれば、「やりたい仕事」もあり、「実現したいこと」もあります。
これらが同じ場所に並んだままだと、何を中心にするのかを決めにくくなります。
ホームページの構成が決まらないように見えても、その手前で「これは何のための事業なのか」がまだ整理されていない。
そんな可能性が見えてきました。
決めることは、手前へ戻ると見えてくる
私は、相談を受けたときに、次の順番で考えるようにしています。
表に出ている相談は何か。
本当は何を決めようとしているのか。
それを決める前に、何が決まっている必要があるのか。
そこが決まれば、最初の相談は動き出すのか。
D社長の場合、表に出ていた相談は「ブランドやホームページを整えたい」でした。
けれど、その手前には「この新しい事業を、何の事業として進めるのか」という問いがありました。
さらにその前には、「なぜこの事業をやるのか」「誰に、何を届けたいのか」「一人で続けるなら、何をやらないのか」という問いがあります。
ここが見えてくると、ホームページで何を伝えるかも選びやすくなります。
もちろん、これはひとつの見立てです。
会社によって、判断が止まっている場所は違います。確かめてみると、別の場所に原因があることもあります。
新規事業を「目的」ではなく「手段」として見る
新規事業そのものを目的にすると、「何か新しいことをしなければ」と考えやすくなります。
すると、アイデアを増やしたり、成功事例を探したりすることに意識が向きます。
けれど、新規事業は本来、会社が何かを実現するための手段です。
そう考えると、問いは少し変わります。
何を実現したいのか。そのために、この新規事業は必要なのか。
この問いがあると、「進める理由」だけでなく、「進めない理由」も考えられます。
新しいことを始めることだけが前進ではありません。
今はやらない。形を変える。別の方法を選ぶ。
それも、会社にとっては大切な判断です。
D社長との対話で変わったのは、答えではなく順番でした
D社長とは、まだ最初の面談を終えた段階です。
新しい事業の形が決まったわけではありません。
ただ、次に考える順番は変わりました。
ホームページの構成を考える前に、なぜこの事業をやるのか。
誰に、何を届けたいのか。
製品、体験、作品づくりを、それぞれ何のために行うのか。
そして、一人で続けるために何を手放すのか。
利益の出し方を考えるのは、その先です。
答えが出ていなくても、「次に何を確かめればいいのか」が分かれば、考えることはできます。
新規事業で大切なのは、早く答えを出すことよりも、今決めるべきことを取り違えないことなのかもしれません。

あなたが今、本当に決めたいことは何でしょうか
新規事業の考え方に迷ったら、方法を探す前に、一度だけ書いてみてください。
「私がいま決めようとしているのは、〇〇だ」
始めるのか。
続けるのか。
何のためにやるのか。
もし言葉にならないなら、考え方が足りないのではなく、判断する場所がまだ見えていないのかもしれません。
方法を増やす前に、まず「何を決めるのか」を見つける。
それだけで、新規事業の見え方は少し変わります。
→ 自分の会社の判断が、どこで止まっているのかを確かめる(準備中)
→ 新規事業の判断が、事業全体のどこにつながっているのかを見る(準備中)