2. アイデアが形にならない悩み
ビジネスモデルが思いつかないときは? 「毎月もらいたい」から「毎月払う理由」へ
RBTDESIGN
「会員制にすれば、毎月の売上が安定すると思うんです」
家の片づけや遺品整理を手がけるU社長は、新しいサービスを考えていました。
今の仕事は、依頼があるたびに見積もりを出し、作業が終われば一区切りです。忙しい月もあれば、依頼が少ない月もあります。
地域で積み重ねてきたお客様との関係を、もっと長く続けられないか。毎月の売上も、ある程度見通せるようにしたい。
そこで浮かんだのが、会員制でした。
ただ、月額料金や会員特典を考え始めると、手が止まります。
相談を無料にするか。片づけ料金を割り引くか。定期的に訪問するか。
どれもできそうです。でも、お客様が入会する姿を、はっきりとは思い描けませんでした。
料金を決める前に、確かめたいことがあった
打ち合わせでは、会費に何を含めるかを話していました。
「何かあったときに、気軽に頼ってもらえるようにしたいんです」
「何か、というのは、たとえばどんなことでしょうか」
「家具を動かしたいとか、家の中を片づけたいとか。うちで対応できることはいろいろあります」
私は、もう少し具体的に尋ねました。
「では、何も頼まなかった月にも、お客様は会費を払いたいと思うでしょうか」
U社長は、少し考えました。
「そこなんですよね。毎月、片づけが必要なわけではないですから」
会員制にしたい会社側の理由は、はっきりしています。
一方で、お客様が毎月払い続ける理由は、まだ決まっていませんでした。
料金や特典を選びにくかったのは、そのためかもしれません。
会員制という形から、考え始めていた
ビジネスモデルを考えるとき、うまくいっている会社の仕組みを参考にすることがあります。
月額制、会員制、都度払い。選択肢を知っておくことは役に立ちます。
ただ、仕組みから考え始めると、その形に合わせてサービスを足したくなることがあります。
会費をいただくなら、特典が必要だ。特典が少ないなら、無料相談もつけよう。それでも弱いなら、訪問を増やそう。
こうして内容を増やしても、お客様が必要としていなければ、入会する理由にはなりません。対応する側の負担だけが増える可能性もあります。
U社長と先に確かめたかったのは、次のことでした。
片づけが終わったあとも、お客様にはどんな困りごとが残っているのか。
そこに継続して引き受ける意味があれば、会員制を考える根拠になります。
お客様本人と、離れて暮らす家族では、必要なものが違う
そこで、会員特典の案をいったん脇に置き、お客様が困る場面を考えてみました。
引っ越しを前に、家財を一度に整理したい人なら、必要なのは、その機会にきちんと作業を終えてもらうことかもしれません。
一方で、離れて暮らす親の家が気になっている人なら、片づけが終わったあとも、家の状態を確かめたいと感じるかもしれません。
同じ家に関する相談でも、求めるものが違います。
「そう考えると、頼む人と、実際にその家に住んでいる人が違う場合もありますね」
U社長の言葉を受けて、考えることが増えました。
誰が困っているのか。誰がサービスを受けるのか。誰がお金を払うのか。
離れて暮らす家族がお金を払うなら、作業をするだけでなく、何をしたか、どんな状態だったかが伝わることも大切になるでしょう。
ただし、これはまだ仮説です。実際にそうした相談があるのか、どこまで頼みたいのかを確かめる必要があります。
繰り返し作業することだけが、継続の理由ではない
毎月の料金に見合うものを考えると、毎月何かをしなければならないように感じます。
でも、お客様が求めるものは、作業の回数とは限りません。
必要なときに連絡できる相手がいること。家の事情を知っている人に、毎回説明し直さず頼めること。定期的に様子がわかること。
こうしたことに価値を感じる人もいるかもしれません。
ただ、「安心できるはず」という会社側の想像だけでは決められません。
どんな場面で頼れるのか。どこまで対応するのか。別料金になるのは何か。その約束を、自社の人員や時間で守れるのか。
お客様が払う理由と、会社が続けられる条件を、両方確かめる必要があります。
毎月料金をいただくなら、毎月の作業量だけでなく、継続して何を約束するのかを明確にすることが大切です。
届けるものが見えると、料金の形を比べられる
ここまで話すと、選択肢は会員制だけではなくなりました。
一度の片づけで用事が済むなら、その都度、作業に見合う料金をいただく形が考えられます。
年に数回、決まった手入れが必要なら、回数や内容をまとめたプランも考えられます。
継続した確認や相談への対応を求められるなら、月額料金と、作業ごとの料金を組み合わせる方法も候補になります。
どれがよいかは、まだ決められません。
ただ、最初のように「どの仕組みなら売上が安定するか」だけで比べる必要はなくなりました。
お客様が必要とする頻度、頼みたい内容、対応にかかる手間。それらに照らして、合う形を検討できます。
ビジネスモデルは、料金の取り方だけでできているわけではありません。誰に何を届け、どう提供し、その費用をまかなって利益を残すか。その組み合わせとして考えていきます。
この日の結論は、会費を決めることではなかった
打ち合わせの終わりに、U社長と次に確かめることを整理しました。
まず、過去の依頼を振り返る。片づけが終わったあとに、どんな相談があったかを確認する。
次に、該当するお客様に、今も困っていることや、継続して頼みたいことがあるかを聞く。
そのうえで、対応に必要な時間や費用を見積もり、どの料金の形なら続けられるかを考える。
「会員制にするかどうかは、その話を聞いてからでもよさそうですね」
この日、会員制を始めるとは決めませんでした。
代わりに、始めるかどうかを判断するために、何を確かめるかが決まりました。
調べた結果、会員制への需要が見つかるかもしれません。都度払いのほうが、お客様にも会社にも合っているとわかるかもしれません。
どちらであっても、理由を持って選べます。

お客様は、何にお金を払うのでしょうか
ビジネスモデルが思いつかないときは、次の3つを書いてみてください。
誰が、どんな場面で困っているのか。
自社が関わることで、その人の何がよくなるのか。
それは一度で済むのか、継続して必要なのか。
そのうえで、誰が何にお金を払い、自社にはどんな費用がかかるかを考えます。
お金をいただく形に迷ったら、お客様が払う理由に戻ってみる。
そこが具体的になると、自社に合うビジネスモデルも選びやすくなります。
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