2. アイデアが形にならない悩み
事業構想を整理するには? まとめる前に、「だから」がどこで途切れているかを見る
RBTDESIGN
頭の中には、事業の構想がある。
お客様のことも、商品のことも、これからやりたいことも話せる。
けれど、人に説明しようとすると長くなる。紙に書き出しても、いろいろな話が並ぶだけで、ひとつの事業としてまとまらない。
そんな経験はないでしょうか?
構想を整理するとき、顧客や商品、強みなどを項目ごとに書き出す方法があります。それも役に立ちます。
ただ、項目がそろっていても、構想がまとまるとは限りません。
大切なのは、項目と項目のあいだに「だから」がつながっているかどうかです。
誰かが困っている。だから、この価値が必要になる。だから、この方法で提供する。
この「だから」が途中で途切れていると、構想はバラバラに見えてしまいます。
「一緒につくってくれる人がほしい」と話したN社長
N社長は、賃貸物件の管理と建築工事を手がける会社を経営しています。
最初の相談は、ホームページについてでした。
「きれいにつくってほしいわけではないんです。こういう言葉にしましょうか、こういう見せ方にしましょうか、と売れるコピーをつくってくれる人がほしい」
詳しく話をうかがうと、N社長の頭の中には、たくさんの構想がありました。
すでに物件を持っているオーナーへの支援。
土地の活用を考えている人への提案。
これから不動産投資を始めたい人へのサービス。
入居者が自分で手を加えられる賃貸住宅。
スタッフに仕事を任せる仕組み。
そして、将来は同じ仕組みをほかの地域にも広げたいという構想。
どれも思いつきではありません。
すでに動いているものもあれば、準備を進めているものもあります。
ただ、外から見ると、それぞれが別の話に見えました。
建築の会社なのか。賃貸管理の会社なのか。いったい誰に向けた会社なのか。
話を聞くほど、かえって全体が見えにくくなっていました。
「一つに絞る」が正解とは限らない
構想が広がっているとき、よく言われるのが「ターゲットを絞りましょう」という助言です。
顧客を決める。提供する価値を決める。いちばん有望な事業に集中する。
確かに、必要な場合もあります。実は私も、最初はそう考えていました。
N社長が話していた「入居者が自由にDIYできる賃貸住宅」は、古い物件と相性がいいのではないか。
そう思い、
「古い物件に絞ってみるのはどうでしょう」
と尋ねました。
ところが、N社長の答えは違いました。
新しい物件にも、使い勝手や設備の悩みはある。家賃の高い物件でも、自分で手を加えたい人はいる。
家賃の安い、古い物件だけの話ではないというのです。
私の考えは的外れでした。
けれど、そのやり取りで一つ分かったことがあります。
N社長は、対象を絞れずに迷っているのではありません。広く対応することを、自分で選んでいたのです。
「ターゲットは、困っている人です」
N社長は、そう話しました。
では、広い対象を一つの事業として、どう説明すればいいのでしょうか。
足りなかったのは「だから」というつながり
話を聞き進めるうちに、建築と賃貸管理の関係が見えてきました。
N社長の会社には、建築の知識と技術があります。
だから、入居者が部屋に手を加えることも受け入れられる。
設備に不具合が起きても、自分たちで対応できる。
さらに、退去したあとの部屋を改修し、物件の価値を高めることもできる。
つまり、建築と賃貸管理は、別々の仕事として並んでいるだけではありませんでした。
建築と賃貸管理が一体になっているからこそ、できることがあるのです。
ここが見えると、ほかの構想の意味も変わってきます。
入居者がDIYしてよい賃貸住宅は、独立した新しい事業というより、建築と管理を一体で行う仕組みから生まれた特徴の一つです。
最初はバラバラに見えていた話が、一つの仕組みとして見えてきました。
N社長の構想は、最初からいくつもの部品がそろっていました。
足りなかったのは、新しいアイデアではなく、部品同士がどうつながっているのかを説明する言葉だったのです。
項目が埋まっていても、構想がまとまらない理由
事業構想を整理するとき、私たちはつい項目を埋めることに集中します。
誰がお客様なのか。
何を提供するのか。
自社の強みは何か。
どうやって売るのか。
これらを書き出せば、事業計画書らしいものはできます。
でも、少し考えてみてください。たとえば、こんな構想があったとします。
「地域の中小企業に向けて、業務の効率化を支援する。強みは長年の現場経験。SNSで発信し、セミナーから相談につなげる」
一見、まとまっています。
けれど、間に「だから」を入れてみるとどうでしょうか。
長年の現場経験がある。だから、なぜ業務の効率化なのか?
業務の効率化を支援する。だから、なぜSNSやセミナーなのか?
ここで説明が止まるなら、まだつながっていない部分があるということです。
項目は、何をするかという答えです。
一方、「だから」は、なぜそうするのかという理由です。
項目を並べるだけでは、何をする事業なのかは分かっても、なぜその事業になるのかまでは分かりません。
そして、その理由がつながっていないと、どの方法を選ぶべきかも判断しにくくなります。
絞る前に、つながりを確かめる
N社長の場合、最初から対象を一つに絞る必要はありませんでした。
物件のオーナーも、土地活用を考える人も、不動産投資を始めたい人も、お客様になりえます。
大切なのは、それぞれのお客様に提供する価値が、建築と管理を一体で行う仕組みとどうつながっているかです。
もちろん、どんな事業でも広げていいわけではありません。
本当に対象が広すぎて、絞ったほうがいい場合もあります。
ただ、絞るかどうかを決める前に、構想のつながりを確かめることが大切です。
つながっているものを「広すぎるから」と削ってしまうと、事業の強みまで失うかもしれません。
反対に、どこにもつながらないものが見つかることもあります。
そのときは、なぜ必要なのかを考える。
理由が見つからなければ、いったん外すこともできます。
何を残し、何を外すか。
その判断も、「だから」がつながっているかどうかで変わってきます。
N社長の構想は、まだ整理の途中
N社長は、何をやるのか分からずに迷っていたわけではありません。やりたいことも、お客様も、すでにご自身の中にありました。
次に必要なのは、新しいコンセプトを考えることではありません。
まず、物件のオーナー、土地活用を考える人、不動産投資を始めたい人など、お客様を分けて考えます。
それぞれ、何に困っているのか。
何をきっかけに相談するのか。
なぜN社長の会社なら、その困りごとに応えられるのか。
ひとつずつ確かめながら、建築と管理が一体になった仕組みとのつながりを整理していきます。
N社長の事業は、今その手前にあります。

あなたの構想は、どこで「だから」が止まりますか
事業構想がまとまらないとき、すぐにひとつに絞ろうとする必要はありません。新しいアイデアを増やす必要もないかもしれません。
まずは、今ある構想を声に出して説明してみてください。
誰かが困っている。
だから、この価値を提供する。
だから、この方法を選ぶ。
だから、この手段を使う。
途中で「だから」がつながらなくなったら、そこが次に考える場所です。
まだ理由が決まっていないのか。確かめていないことがあるのか。それとも、そもそも必要のないものなのか。
そこが見えれば、次に何をするかも考えやすくなります。
事業構想を整理するとは、必ずしも情報を減らしたり、きれいな文章にまとめたりすることではありません。
一つひとつの考えが、なぜそこにあるのか。その理由をつなげて、事業全体が見えるようにすることです。
あなたの事業構想では、「だから」がどこで途切れているでしょうか。
構想のどこで判断が止まっているのかを確かめる(準備中)
構想の部品が、事業全体のどこにあたるのかを見る(準備中)