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4. 決められない悩み

決断を先延ばしにしてしまう原因は? 「何がわかれば決められるか」を考える

RBTDESIGN

2026/3/3 03:00

「そろそろ決めないといけないんです」

V社長は、使われなくなった建物の資料を広げながら話しました。

古い空き家と、かつて社員が暮らしていた寮。どう活用するかを、何年も考えてきたそうです。

近くの会社に寮として貸す。地域の資源と組み合わせる。人が集まる場所にする。

案は、いくつもありました。それでも、実行するところまでは進んでいません。

「今度こそ決めようと思うんです。でも、話を聞いているうちに、もう少し考えたほうがいい気がしてきて」

こうしたとき、決断力が足りないと感じるかもしれません。

ただ、先に確かめたいことがあります。

何がわからないために、今は決められないのでしょうか。

そこが具体的になると、「もう少し考える」を、判断に必要な材料をそろえる行動に変えられます。

案はある。でも、選ぶ理由がなかった

V社長の会社は、もともと”ものづくり”をしていました。事業の変化とともに、今は不動産の賃貸が中心になっています。

使われていない建物も、できれば収益を生む形で残したい。ただ、改修にはお金がかかります。始めたあとに、会社がどこまで関われるかも気になります。

私は、これまで検討した案について尋ねました。

「寮として貸す案は、どこで止まったのでしょうか」

「借りたい会社があるなら、よいと思います。ただ、直すのにいくらかかるか。その金額をかけて、本当に借りてもらえるのかがわからなくて」

「地域の人が集まる場所にする案は、どうですか」

「役には立ちそうです。でも、誰が運営するのか。うちで続けられるのかという話になります」

話を聞くと、それぞれの案に、まだ確かめられていないことがありました。

ところが、打ち合わせのたびに新しい案が加わり、前の案が止まった理由は整理されないままになっていたのです。

「もう少し考える」の中身を分けてみる

私は、V社長と一緒に、気になっていることを書き出しました。

借りたい人はいるのか。改修費はいくらかかるのか。運営は誰が担うのか。会社として、どこまで投資できるのか。

並べてみると、性質の違う問いが混ざっています。

借り手の見込みや改修費は、調べて確かめることです。

一方、会社としてどこまで投資するか、自社で運営まで担うかは、社長が方針を決めることです。

調べることと、自社で決めることが混ざっていると、調査を増やしても判断が進まない場合があります。

たとえば、自社で運営するつもりがないなら、運営を引き受ける相手が必要です。その相手が見つからない案は、現時点では進めにくいとわかります。

投資できる範囲が見えていれば、改修費を調べたときにも、検討を続けるかどうかを判断できます。

V社長が次に必要としていたのは、案を増やすことよりも、案を比べるための条件を整理することでした。

今まで待てたことが、これからも待てるとは限らない

もうひとつ、確認したことがあります。

「活用方針が決まるまで、このまま待つと、何が起きそうですか」

V社長は、建物の傷みが進んでいることや、周囲への影響が気になり始めていることを話しました。

以前は、急いで決めなくても大きな問題にはならなかったのかもしれません。

ただ、建物の状態は変わります。待つことで、必要な修繕が増えたり、選べる活用方法が限られたりする可能性もあります。

ここで、「活用方法を決めること」と「建物の状態を確認すること」を分けました。

どの事業に使うかは、まだ決められません。それでも、安全面や劣化の状態を専門家に確認してもらうことは、先に進められます。

大きな決断を保留していても、その間に必要な対応まで止める必要はありません。

先延ばしを、条件のある保留に変える

「もう少し考えましょう」だけでは、次の打ち合わせでも同じ話に戻りやすくなります。

そこで、保留する理由と、次に判断する条件を言葉にしました。

たとえば、寮として貸す案なら、こう整理できます。

「借り手の見込みと改修費がわからないので、今は投資を決めない。まず、そのふたつを確認する」

さらに、誰が調べるか、いつ進み具合を確認するかを決めます。

調査が終わらなかった場合も、その時点で見直します。情報がそろうまで、いつまでも待ち続ける形にはしません。

保留にするときに置いておきたいのは、次の3つです。

  • 今、決めない理由

  • 判断するために確かめること

  • もう一度判断する日

理由を書くだけでは、状況は変わりません。確認する行動と、見直す機会まで決めることで、保留中も判断の準備を進められます。

待つ理由も、確かめてよい

もちろん、決められない理由が、すべて情報不足とは限りません。

投資を失敗したくない。建物への思い入れがあり、別の用途に変えることに抵抗がある。関係者の意見が分かれている。

こうした気持ちや事情が、判断に関わっていることもあります。

その場合、数字を集めるだけでは決めにくさが残ります。

「費用がわかっても、まだ気になることはありますか」

そう聞いてみることで、本当に引っかかっていることが見えるかもしれません。

大切なのは、待つ理由を正当化することではありません。何が判断を止めているのかを確かめ、それに合った対応を選ぶことです。

この日の結論は、活用方法の決定ではなかった

この日の打ち合わせで、建物の使い道が決まったわけではありません。

決まったのは、活用案を選ぶ前に、何を整理するかでした。

会社として負担できる投資と運営の範囲を考える。候補となる借り手や運営者の見込みを調べる。建物の状態と改修費を確認する。

その結果を持ち寄り、改めて案を比べることにしました。

「何を考えればいいのかが、少しはっきりしました」

V社長の言葉は、まだ決断したという意味ではありません。

ただ、「そろそろ決めなければ」と抱え続けていた状態から、判断に向けて進める状態には変わりました。

今、決めていないことをひとつ書いてみる

決断を先延ばしにしていると感じたら、次の一文を埋めてみてください。

「今は〇〇がわからないので決めない。△△を確かめて、□□にもう一度判断する」

うまく書けない場合は、その前に決める方針や、言葉にできていない不安があるのかもしれません。

そして、もうひとつ確かめます。

「その日まで待つことで、困ることはないだろうか」

決断には、急いだほうがよいものも、材料をそろえてからのほうがよいものもあります。

今決めるかどうかに迷ったときは、何がわかれば決められるのか、いつまで待てるのかを具体的にすることから始めてみてください。


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