5. 決めたのに進まない悩み
優先順位はどう決める? その仕事は、ほかの仕事の成果を左右していますか
RBTDESIGN
やることが多すぎて、優先順位がつけられない。
そんなとき、まず思い浮かぶのは「急ぎのものから」「大事なものから」という並べ方かもしれません。
けれど、経営の仕事は、急ぎかどうかだけでは並びません。
先に置くのは、ほかの仕事の成果を左右している一つです。
その一つが動かないうちは、ほかの仕事をどれだけ丁寧にこなしても、成果が伸びにくいことがあります。逆にそこが見えると、残りの仕事の順番や、今はやらなくてよい仕事も見えてきます。
食と身体のカウンセリングを仕事にしているK社長の話から、考えてみます。
「全部やったほうがいいと思ってる。だけど手は2本しかない」
K社長は、予防医学の考え方をもとに、食事や体質の相談にのる事業を営んでいます。本業は看護師さんです。
相談につながる集客の入口として、いくつもの取り組みを続けていました。
月に一度の、カフェ形式の小さな集まり。テーマを決めて話すセミナー。ウェブに書く記事。公式LINEに登録してくれた方への配信。SNSの投稿。
どれにも、やる理由があります。
その日、私たちが話し合ったのは、これらをスケジュールに落とし込むことでした。
記事は週に一本。配信も週に一度。セミナーは2か月に一度。準備は何日前から始めるか。まとめてつくれるものはどれか。
一つずつ予定に入れていくと、途中で手が止まりました。
入り切らないのです。
この事業に集中して使える時間そのものが、もともと限られていました。
「全部やったほうがいいと思ってる。だけど手は2本しかない」
K社長はそう言って、こう続けました。
「今、完全にオーバーワークで…」
重要な仕事ばかりで、順番を決められない
優先順位の決め方としてよく紹介されるのは、緊急度と重要度で仕事を四つに分ける方法です。
急ぎで重要なものから手をつける。急ぎではないが重要なものに、時間を確保する。
役に立つ方法です。頭の中にある仕事を外に出すだけで、見通しがよくなることもあります。
ただ、K社長の取り組みを当てはめると、ほとんどが「重要」に入ってしまいます。
集まりも、セミナーも、記事も、配信も、お客様に出会うために必要。どれも間違っていません。
重要なものばかりが並ぶと、表をつくっても順番は決まりません。
結局、締め切りが近いものから手をつけることになります。そして、締め切りのない仕事ほど、いつまでも後ろに回ります。
ほかにも、人に任せる、道具で効率を上げる、といった方法がよく勧められます。これも大切です。
ただ、どの仕事を任せ、どの仕事を効率化するかを決めるにも、やはり順番が要ります。効率を上げて空いた時間に、また別の「やったほうがいい」仕事が入ってくることもあります。
仕事を一つずつではなく、つながりで見る
RBTDESIGNでは、一つずつ仕事に点数をつける前に、仕事同士のつながりを見ます。
この仕事が進むと、ほかの何が変わるのか。この仕事が進まないと、ほかの何に影響するのか。
K社長の仕事を、お客様が相談するまでの流れに置いてみます。
知ってもらう。集まりやセミナーに来てもらう。その後も関係を続ける。相談を申し込んでもらう。
どの取り組みが、どの場面を支えているでしょうか。
たとえば、知ってくれる人が少なければ、その後の集まりや配信を充実させても、相談につながる人数は増えにくいかもしれません。
入口にあたる仕事が、その先の仕事の成果を左右している可能性があります。
ただし、入口なら何でもよいわけではありません。
近くに住む方が通う事業で、ウェブの記事を全国に向けて書いても、読んだ人が通えるとは限りません。
記事が誰に届き、相談までのどの場面を支えるのか。続け方を考えるには、そこを確かめたいところです。
「やりたいかどうか」ではなく「何が効いているか」
話の途中で、私はこう伝えました。
「全部は入らないので、優先順位の低いものは削らないといけないですね」
そして、もう一言。
「やりたい、やりたくないじゃなくて、何が効果的か、で選びませんか」
それまでの問いは「どうやって全部回すか」でした。
ここで問いが変わりました。
全部を回す必要が、本当にあるのか。
優先順位がつかなかったのは、時間が足りないことだけが理由ではなかったのかもしれません。時間が限られているときに、何を残し、何を減らし、何をやめるかを決める判断基準が、まだなかった。だから、どの仕事も「やったほうがいい」のまま並んでいた。
もちろん、「効果」だけで選べばよいとも限りません。続けられるかどうか、K社長自身に無理がかからないかどうかも、同じくらい大切な基準です。
どの基準を上に置くかは、K社長が決めることです。
優先順位は、この順で考える
K社長との対話を振り返ると、考える順番が逆であることに気付きました。
先に予定を組み、入り切らないと分かってから、優先順位の話になった。次の順で考えたほうが、早くたどり着けたはずです。
1. 使える時間の総量を先に決める
月に何時間、この事業に使えるのか。ここが決まらないと、何を入れても「入るかどうか」が分かりません。
2. ほかの仕事の成果を左右している一つを探す
お客様にたどり着くまでの流れに仕事を並べ、どこが詰まると後ろがまとめて空回りするのかを見ます。そこが、最初に置く仕事の候補です。
3. 残った仕事を、重さで分けて予定に入れる
集中が必要な重い仕事と、すき間の時間でできる軽い仕事を分けます。重い仕事は日を固定し、締め切りから逆算します。
予定を組むのは、最後で十分です。
K社長の、いま
K社長の事業では、すべての取り組みをそのまま続ける前提をいったん外しました。
記事は毎週ゼロから書くのではなく、書く日を決めて、まとめて何本かつくる方法を試しています。セミナーは開催日を先に決め、テーマ、台本、スライド、練習の締め切りを逆算することにしました。集中が必要な仕事と、すき間でできる仕事も分けて扱います。
その話をしたとき、K社長はこう言いました。
「それが知りたかった。ここまでにこれやっとけばいい、っていう」
一方で、まだ決まっていないこともあります。
SNSを続けるか、大きく減らすか。記事の位置づけをどうするか。Google Map対策など、近くの人に見つけてもらう取り組みをどこまで重視するか。そして、この事業に月何時間を使うのか。
仕事の数は、まだほとんど減っていません。
変わったのは、何から決めればよいかが見えたことでした。

あなたの仕事なら、何を先に残しますか
いま抱えている仕事を、一度すべて書き出してみてください。
どれも大事に見えるはずです。実際、大事なのだと思います。
そのうえで、一つずつ確かめてみます。
この仕事が進むと、ほかのどの仕事の成果が変わるのか。この仕事が止まっていると、ほかのどの仕事が空回りするのか。
急ぎかどうかとは、別の順番が見えてくるかもしれません。
その一つがどれなのかは、あなたの事業の流れの中でしか分かりません。
今の仕事の中で、ほかの仕事にも影響している一つはどれでしょうか。
→ あなたの事業では、どこで判断が止まっているのかを確かめる(準備中)
→ 仕事同士が、事業全体でどうつながっているのかを見る(準備中)