7. RBTDESIGNの思想
判断を設計するとは
RBTDESIGN
判断が決まらないとき、私たちはつい「覚悟が足りない」「情報が足りない」と理由を探します。
でも実際は、もっと手前の問題であることが多いのです。
考えていないわけではありません。むしろ、考えている。 材料が多すぎて、論点が混ざり合って、どこから手をつければいいのか分からなくなっている。
そして、そこで無理に決めようとすると、判断は毎回とても重くなります。
なぜ、毎回ゼロから考えることになるのか
判断が重くなる理由のひとつは、毎回ゼロから考えているからです。
新しい相談が来た。新商品を提案された。提携の話が来た。市場が伸びている。補助金が使える。
そのたびに、一から議論が始まります。
ある人は売上を重視する。ある人は顧客満足を重視する。ある人は現場負担を重視する。社長は将来性を重視する。
どれも間違ってはいません。でも、何を優先する会社なのかが決まっていなければ、議論は毎回同じところで止まります。
「結局、うちは何を大切にするんでしたっけ?」
判断を設計するというのは、この状態を変えることです。 一度決めたことを、次の判断の基準として使えるようにしておく。
何を基準に決めるのか
では、その基準は何から決まるのか。
大きく二つあります。意志と現実です。
意志とは、「自分たちはどうしたいのか」。 これまで何を大切にしてきたのか。これから何を守りたいのか。何を変えたいのか。誰の役に立ちたいのか。
「安さではなく品質で選ばれたい」「この技術を次の世代に残したい」といったものです。これらは数字からは出てきません。
現実とは、「そうしたいだけでは変えられないもの」。 市場に需要があるのか。顧客は本当に払うのか。実行できる人がいるのか。利益が残るのか。
どちらか一方では決まりません。
意志だけで決めると、事業として成立しないことがあります。 現実だけで決めると、売れそうなことは分かっても、なぜ自分たちがやるのかが分からなくなります。
現実は、諦めるための材料ではない
「現実を見ましょう」という言葉は、ときどき「理想を捨てましょう」という意味で使われます。
そうではありません。現実を見るのは、意志を実現するためです。
たとえば「この品質だけは守りたい」という意志がある会社で、原材料費が上がり、今の価格では利益が残らなくなったとします。
品質を落とす、という方法もあります。 でも、価格を上げる。顧客を変える。商品の種類を減らす。販売方法を変える。生産工程を見直す。そういう方法もあります。
守りたいものがはっきりしていれば、何を変えるべきかを考えられます。
意志は、何を守るかを決める。 現実は、何を変える必要があるかを教える。
判断とは、その二つの間に橋をかけることです。
良い判断とは、成功する判断のことではない
もうひとつ、設計しておきたいことがあります。
何をもって「良い判断」とするかです。
判断を「未来を正確に当てること」だと考えると、成功すれば正しく、失敗すれば間違いということになります。
でも、良い判断をしても想定外の出来事で失敗することはあります。逆に、深く考えずに決めても偶然うまくいくことがあります。
結果だけで評価すると、たまたま成功した雑な判断を良しとし、きちんと考えたが結果が出なかった判断を悪しとすることになります。
だから、判断そのものと結果を分けて考えます。
必要な情報を確認したか
選択肢を比較したか
何を基準に選ぶかを決めたか
意志と現実の両方を見たか
リスクを understand したうえで選んだか
なぜその選択をするのか、説明できるか
良い判断とは、必ず成功する判断ではありません。 その時点で考えるべきことを考えたうえで、理由を持って選んだ判断です。
同じ選択肢でも、会社によって答えは変わる
A案は利益が大きい。ただし初期投資も大きく、失敗したときの損失も大きい。
B案は利益が小さい。その代わり小さく始められて、途中で修正しやすい。
どちらが絶対に正しい、とは言えません。
今は成長を優先したい。リスクを取れる資金がある。この市場へ本気で進みたい。 そういう会社ならAかもしれません。
まず顧客の反応を確かめたい。資金に余裕がない。やり直せることを重視する。 そういう会社ならBかもしれません。
重要なのは「Aが正解だったか」ではなく、なぜ自分たちはAを選んだのかです。
理由が明確なら、結果が想定と違ったときにも、どの前提が外れたのか、何を見直すのかを考えられます。
基準があると、やらないことも決まる
判断の設計は、選ぶためだけのものではありません。
「既存顧客との強みを活かせる事業を優先する」という基準があれば、接点のない市場への進出は後回しにできます。 「価格競争をしない」という基準があれば、大量販売を前提とした案件を断れます。
すべてをやることはできません。 基準は、何を選ぶかを助けるだけでなく、何を捨てるかを決めるためにも使います。
決めて、動いて、また決め直す
判断は、一度決めたら二度と変えてはいけないものではありません。
決める。動く。確かめる。必要なら決め直す。
実行すれば新しい情報が入ります。顧客がどう反応したか。現場で何が起きたか。想定した前提は正しかったか。
そのとき、判断理由が残っていれば、どこが合っていてどこが違っていたのかを振り返れます。 これを繰り返すほど、会社の判断精度は上がっていきます。
「なんとなく良さそうだった」では、どこを学び直せばいいのか分かりません。
判断を設計するとは、次の判断が良くなる仕組みを持つことでもあります。
迷いは消えない。迷う範囲が狭くなる
基準ができても、迷わなくなるわけではありません。新しいことに挑戦すれば、迷う場面はむしろ増えます。
ただ、迷ったときに戻る場所があります。
自分たちは何を大切にする会社なのか。何を守り、何なら変えていいのか。
すべての答えが自動的に決まるわけではありません。それでも、考える範囲はかなり狭くなります。
判断を設計するとは、迷わないようにすることではありません。 迷ったときに、どこへ戻ればいいかが決まっている状態をつくることです。
経営者が、次も決められる。だから、事業は進む。

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