2. アイデアが形にならない悩み
アイデアを決めきれないのはなぜ? 候補を比べる前に、自社が変えられることを確かめる
RBTDESIGN
新しい事業や営業先の候補が、いくつも並んでいる。
どれも悪くない。
むしろ、どれにも可能性があるように見える。
だから、一つに決めきれない。
決めきれないのは、アイデアが足りないからではありません。多くの場合、候補を比べる基準がまだ言葉になっていないからです。
候補の魅力だけで比べようとすると、どの案もよく見えます。必要なのは、候補を増やすことより、「自社は何を変えられる会社なのか」を確かめることです。
金属部品をつくるF社長の会社を例に、考えてみます。
新しい取引先を、どこに探すか
F社長の会社は、金属部品の製造を手がけています。
自社で型をつくり、複雑な形を一度で成形できる技術があります。
新しい顧客や、新しい用途へ営業を広げることが、これからの課題でした。
ただ、どの相手へ、どの順番で提案していくのか。
ここで判断が止まっていました。
候補を出すことと、一つを選ぶことは別の仕事です。
既存の市場を深めるのか。これまで接点のなかった業界を探すのか。新しい用途を考えるのか。
どの方向にも可能性はあります。
だからこそ、魅力だけでは選べません。
決めきれないのは、判断を大事にしているからかもしれない
候補を前にして決めきれないとき、自分は決断力が足りないのではないかと思うことがあります。
けれど、そうとは限りません。
選んだあとの負担や、外したときの影響まで考えるからこそ、簡単には決められないことがあります。
判断を大事にするほど、候補が多いままでは動きにくくなります。
大切なのは、勢いで一つに絞ることではありません。
何を基準に選ぶのかを、候補の外に置くことです。
基準が見えれば、候補を減らすのではなく、選ぶ理由を持てるようになります。
候補を並べても、決まらない理由
新しい取引先を探すときは、候補のリストをつくったり、営業資料を整えたりします。
どれも必要な準備です。
ただ、その前に「自社の技術は、どんな相手にとっていちばん大きな意味を持つのか」が言葉になっていなければ、候補は選べません。
比べる基準がないまま、比べるものだけが増えていくからです。
候補を点数化して比べる方法もあります。売上規模、距離、業界の伸びなどに点をつける方法です。
これも役に立ちます。
ただ、どの項目を重く見るかが曖昧なままでは、点数をつけても選ぶ理由ははっきりしません。
表を細かくしても、選ぶ基準がなければ、比べる項目が増えるだけです。
F社長との対話でも、最初に確認したのは営業先のリストではありませんでした。
「今のお客様は、なぜ御社を選んでいるのでしょうか」
「自社で型をつくれることは、お客様にとって何を変えているのでしょうか」
営業先を探したいという相談の手前に、自社の価値を誰の困りごとに当てるのか、という問いがありました。
困っている場所と、判断が止まっている場所は、同じとは限りません。
よい候補が見つからないと感じるとき、その手前の「何を基準に選ぶか」がまだ整理されていないことがあります。
「できること」ではなく「変わること」で比べる
そこで、営業先を絞る前に、F社長の会社の技術を言い換えてみました。
F社長の会社は、自社で型をつくり、複雑な形を一度で成形できます。
これは、会社ができることです。
技術として、大切な強みでもあります。
ただ、それだけでは、どの相手にとって価値が大きいかは分かりません。
そこで、「自社でできること」を、「お客様の側で何が変わるか」に置き換えます。
自社で型をつくれるということは、設計の早い段階から相談できることです。
複雑な形を一度で成形できるということは、部品の数や組み立ての工程を減らせることです。
F社長の会社が提供しているのは、部品そのものだけではありません。部品点数を減らし、工程を短くすることにも価値があります。
こう置き換えると、探す相手の見え方が変わってきます。
部品点数や工程の多さに困っている会社なら、F社長の会社の技術が大きく役立つ可能性があります。
候補の魅力ではなく、「この技術で、誰のどんな困りごとが大きく変わるか」で比べる。これが、選ぶ基準になります。
基準が変われば、候補の見え方も変わります。
これは、F社長の会社だけの話ではありません。
新規事業、商品、採用、投資などにも、どれも一理ある候補が並ぶ場面があります。
そのたびに候補の魅力だけを比べていると、判断は重くなります。
一度、自社が何を変えられるかを言葉にできれば、次に候補が並んだときも、同じ基準に照らして考えられます。
基準は、一度の判断のためだけにつくるものではありません。
決めきれないのは、材料不足とは限らない
候補を前にして決めきれないとき、材料が足りないと思うことがあります。
けれど、材料を増やすほど選びにくくなることもあります。
比べる基準が言葉になっていなければ、どの情報も「判断を迷わせる材料」になり得るからです。
いくつもの候補を前にして、どれも悪くないと感じるとき。
それは優柔不断ではなく、選ぶための前提がまだ見えていないだけかもしれません。
営業先を広げる前に、確かめたいこと
営業先を広げる前に、まず確かめたいことがあります。
今のお客様は、なぜ自社を選んでいるのか。
自社の技術によって、お客様の工程や部品数は、実際にどれだけ変わっているのか。
その変化を、特に必要としているのはどんな会社か。
営業先を広げるのは、この確認のあとでも遅くありません。
候補を増やすより先に、選ぶ基準をつくる。これが、次の営業先を考える前提になります。

自社なら、何を基準に一案を選ぶでしょうか
アイデアや候補が並んでいるとき、決めきれないのは、考えが足りないからとは限りません。
候補の魅力だけで比べているうちは、どの案もよく見えます。
必要なのは、候補を増やすことより、自社が誰の何を変えられるかを確かめることかもしれません。
自社なら、何を基準に一案を選ぶでしょうか。
→ UNLOCK(準備中):候補を比べる基準を、一緒に言葉にしていく時間です
→ 構造で知る(準備中):事業の全体を一枚で見て、選ぶための前提を確かめる